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年収1000万円は、手取り700万円

プロスポーツ選手の契約が更改され、高額な年俸が報道されると、その金額を聞いてうらやましく思う人は多い。また人材紹介会社などは「目指せ1000万円プレーヤー」などといったうたい文句を広告に使う。年俸の額面に対して、税金や社会保険料などを差し引くと、手取り金額がどれだけになるかを知っている人は少ない。

諸条件によって金額は変わってくるが、ざっくり年収と手取り金額の関係を挙げると、600万なら440万円、1000万なら700万円、1500万なら970万円、2000万なら1250万円、3000万なら1750万円、といったところだ。3000万円では、4割以上を引かれる。

日本のサラリーパーソンは自分で税金の申告を行わず、会社が代行してくれる。そのため、税金や社会保険料の自己負担額を意識せずに暮らしている。高額な年俸を得ている人の話を聞くと、額面金額がそのまま手取り金額だと錯覚する人が出てくるのには、こうした背景がある。高額な年俸金額に見えても、実際の手取り金額は、思ったほど多くない。これが日本の実態だ。

中小企業経営者は、年収を低く抑えている場合も

リスクを取って事業を起こし、ベンチャーの経営者やオーナー経営者が成功した見返りとして、それなりの報酬を得るのは当然だ。アメリカの場合は、グーグルCEOのサンダー・ピチャイ氏の年俸はおよそ210億円、ディスカバリー・コミュニケーションズ(ディスカバリーチャンネルなどケーブルテレビ向け専門チャンネルを数多く運営するアメリカのメディア関連企業)CEOのデイビット・ザスラフ氏は約165億円。GoPro(ゴープロ)創業者のニック・ウッドマン氏は約81億7400万円と、日本企業の経営者とは桁外れの報酬を得ている(データは、2014年の米国会社四季報から引用)。

東京商工リサーチが2018年3月期決算で有価証券報告書が出ていた国内企業2421社を対象に調査したところ、報酬が1億円以上の役員を開示した上場企業は240社、人数は538人だった。これはあくまで大企業であり、その多くはオーナー経営者や創業者ではない。

中堅中小企業の創業者やオーナー経営者はこうした動きには冷ややかだ。事実、中堅中小企業では、経営者は自分の年俸金額を低く抑え、会社に利益が残るようにする人が多い。年俸を増やせば企業の負担は増える一方だが、手取り金額は増えないので、無闇に年俸を多くしても意味がないと考える経営者が多い。会社の自己資金を増やし、経営基盤を磐石にしようとする姿勢がそこにある。