30万円稼げばいいわけじゃない
「給与が少ない」と、とかく社員はぼやく。自分の給与について額面(税金や社会保険料などが控除される前)ではなく、税金や社会保険料などが引かれた手取り金額が、給与だと誤解している人がいる。残念ながらこうした社員は、経営者から評価は受けることはないだろう。企業が社員のために負担しているのは、給与だけではないことを知らずにいるからだ。
企業は、社会保険料(社員の月額給与の15%程度を会社が負担)、将来支払いが発生する退職金の積み立て、福利厚生費、オフィスの家賃、広告宣伝・ホームページ制作や更新に代表される顧客の獲得やPRの費用、機械設備の購入費用や修理費用、パソコンやプリンターなどオフィス機器の経費、社用車の車両経費や燃料代、通信費、事務所で使う事務用品などの消耗品など数多くの経費を負担している。
経理や人事のコストもかかってくる
企業では、1人でビジネスを動かすことは不可能だから、総務や経理などの内勤業務の人材も欠かせない。こうした人たちの給与も、経費として必要になる。企業の労働分配率(付加価値に占める人件費の割合)を3分の1とみると、月30万円の給与を受け取っている社員であれば、給与の約3倍の粗利益が必要になる。
また多くの企業は、商品を仕入れることが必要だ。たとえば、販売価格が100円の商品を売るときに、70円で仕入れた場合には、「100円(売値)-70円(原価)=30円」の粗利益になる。この場合、粗利益率は30%となる。仮に粗利益率30%の商品を売る企業の場合、社員1人当たり30万円のコストが必要であれば、30万円÷30%=100万円となり、社員1人当たり月に最低100万円(損益分岐点の金額なので利益は出ない)以上の売上金額を捻出する必要がある。
その企業の労働分配率が3分の1だと、30万円の経費が必要な社員の場合には、90万円の粗利益が必要になり、90万÷0.3=300万円の売り上げを上げる必要が出てくる。
1つの目安だが、年俸が400万円の人の場合だと、400万円×3(労働分配率が3分の1)で年間に1200万円の粗利益を捻出する必要がある。この計算をした上で、それでも自分の給与や年俸が低いと言える人がどれだけ存在するだろう。
※一人当たりに必要な利益と売り上げの表現をあらためました(9月29日、編集部追記)