会社のムードが悪くなる理由には、いくつかある。1つは業績の低迷だ。もう1つは、問題社員の存在だろう。協調性がない、被害者意識が強い、なおかつプライドが高いなど、非常に扱いづらく、周囲に緊張感を与えてしまう。それが力を持った社員だと、社内分裂を引き起こすこともある。触れたくなくても、事態が悪化すると経営者や管理職は放置しておけない。いったいどのように本人を注意すればよいのだろうか――。
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私が正しい、みんなが間違っている

言葉として不適切かもしれないが、たった一人の問題社員の存在が職場全体の雰囲気を壊してしまうことがある。周囲としては、腫れ物に触らないように注意することが次第にストレスになってしまう。結果として、問題社員ではなく周囲の優秀な社員から退職していくことになる。問題社員としては、自分が原因の一端を担っていることの認識がまったくない。

社員の問題行為については、指導によって改善できるものと改善できないものがある。このところ経営者からの相談が多いのは、自分の考えに固執して周囲との協調性を保つことができないタイプの社員だ。「プライドが異常に高い」といったほうがわかりやすいかもしれない。本人としては、「自分が正しく、周囲が間違っている」という認識が根底にあるから、指導をしてもなぜ批判されるのか理解できない。むしろ不条理な批判を受けているとして、パワハラの被害者としての意識すら持っていることもある。

仕事内容より、人間関係がよければOK

採用時には、「コミュニケーション能力の高い人」を選考要素に入れている企業も多いだろう。それほど職場のコミュニケーションで悩んでいる、あるいは苦い経験をした企業が多いということでもある。たとえば、どれほどクリエイティブでやりがいのある仕事であっても、人間関係で疲弊すると誰しも嫌になってしまう。逆にいえば、人間関係さえ良好であれば、少しくらいつまらないと感じる仕事であっても、働く意義を見出すこともできるだろう。天職というのは、仕事の内容だけでなく、仕事に関わる人との関係性の良し悪しによって決まるといってもいい。会社としては、仕事の内容いかんよりも職場の人間関係にこそ意識を向けるべきかもしれない。

大人のコミュニケーションの本質は、本音と建前の使い分けに尽きる。よく「本音で語り合えば、わかり合える」と言われるし、実際そういうときもあるだろう。だが実際には、本音ばかり述べていたら周囲を傷つけてしまい、確実に職場で浮いてしまう。共同体で暮らしていくためには、俯瞰的に見て、あえて建前のカードを提示することも必要だ。譲歩することが長期的に見て自分のポジションを維持することになる。