いま、接客時には「弟は埼玉県にいます」などと、自分の話もする。見込み客には、父親と同じ世代で、子どもが首都圏に出ているケースも少なくない。一緒に来店する奥さんには「息子さんは元気ですか」「夏休みは帰ってくるんですか」と話しかける。
「奥様とはなるべく話すようにします。アウディは名義がご主人でも奥様が乗ることも多いんです。タイヤ交換などで困らないように、細かいフォローも欠かせません」
提案書は、手書きで認める。流麗な文字だ。自身の人柄が滲む。提案内容も、相手の好みに添った世界に一つだけのものになっている。女性客にはわかりにくいエンジンの仕組みなどは、丁寧に図まで描く。
「古谷さん、成長したね」。客からこう言われるとき、子どもの成長を見つめる親の視線に似たものを感じる。
「お客様は、自分の父母のような、家族のような存在。だからこそ、絶対に損をさせたくないんです」
■服装や靴の選び方…凛として見えるように心がけている。車に乗っても格好よく見えるように、服装の色は黒を選ぶことが多い。
■お客様との接し方…互いに自己を開示するので、家族のような関係になることが多い。しかしお客様と2人で食事に行かないなど、ビジネスの関係は守る。
■セクハラ防衛法…紳士的な顧客が多いため、ほとんどないが、誘いを断るときは「規則なので」と相手を傷つけないように気遣いながらも毅然と言う。
■ONとOFFの時間…ONとOFFは切り替えない主義。頭の中は100%仕事。一昨年買った黒のアウディA3で八甲田をドライブするのが、最高の気分転換。
■自分のセールス点…青森店の顧客は600人いるが、ドライブ中に顧客とすれ違ったとき、ナンバーを見れば誰かすぐにわかる。
(泉谷玄作=撮影)