マンガ家の田中圭一氏が自身をはじめ各界著名人のうつ病体験を記した『うつヌケ』が15万部超のベストセラーを記録した。いまや国民病といわれるうつ病に、どう向き合えばいいか。精神医療の第一人者が、ストレスの多い現役世代にアドバイスを送る。

生真面目で責任感の強い人は注意

実は「うつ病とは○○である」というはっきりした答えはありません。いまだに病気の本体や原因はよくわかっていないのです。1つの「病」だというより、実際はうつという心の痛みのために起こる辛い状態の総称、と考えたほうがわかりやすいでしょう。

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ただ、最近の脳科学の発達によってうつ状態のときは脳内神経伝達物質と呼ばれるセロトニンやノルアドレナリンが減少しているのではないかと考えられるようになっています。しかし、単に神経伝達物質の異常だけではなく、神経のネットワークに変化が起こっている可能性も指摘されています。

発症のきっかけは、両親など大切な人を失う喪失体験、転勤や昇進など環境の変化、職場の人間関係、病気や体調の悪化です。

ただ、こうした強いストレスにぶつかったときの気分の上下は、皆さん普段から経験していますね。

うつはある意味で、イヤなことに出合ったとき、いったん退却して精神的な態勢を立て直すための適応的な反応ともいえます。

男性はアルコール依存症になりやすい

適応的な反応でも、それが行きすぎるととても辛くなります。生活にも支障が出てきます。そうしたときには医学的な治療が役に立つという意味で、病気と呼んでいます。

一般に、生真面目で責任感が強い人はうつ病になりやすいといわれます。しかし、うつ病は誰でもかかるもので、その人にとって苦手な状況におかれたときに発症すると考えたほうがいいでしょう。

人間関係を大切にする人は、仕事の成績よりも職場の人間関係の挫折が重くのしかかりますし、パフォーマンス重視の人は業績が落ちると気分も落ち込みます。たまたま「当たりどころが悪かった」だけで、誰でもうつ病になる可能性があるのです。

また、女性は男性の倍以上、うつ病になりやすいことがわかっています。業績をあげてもなかなか評価されない「ガラスの天井」に象徴される社会的な要因や、月経や妊娠・出産などによるホルモンの変化があることに加え、女性は「思考」を通じてストレスに対処しやすく、ストレスが心の中にたまりやすいという傾向があります。

一方、女性に比べて「行動」でストレスに対処することの多い男性は、そのためにアルコール依存症になりやすいことが知られています。

ただし近年では、女性の社会進出が進むにつれて、こうした男女差は小さくなってきているという国際的な研究結果も報告されています。