周囲が気をつけなければいけないこと
4:励ましてもいいのですか?
身近な人がうつ病になったら、どう接すればいいのでしょうか。よく「頑張って」は禁句だといいますね。確かにうつ病の患者さんに対しては、あまり励まさないことが原則です。
こんなはずではないと一番焦っているのは患者さんです。こうしたときに励まされると、抜けだそうともがいている自分を頭から否定されたように感じてしまいます。肯定も否定もせず、淡々と話に耳を傾けるだけで、患者さんの気持ちはだいぶラクになります。
一方で「心配しているよ」という気持ちを率直に伝えたほうがいい場合もあります。家族だからこそ、言葉によるコミュニケーションに意味があるのです。そのときは「眠れていないようだけど」など具体的に何を心配しているかを伝え、できるだけ穏やかな言葉づかいで話すように心がけてください。同時に何が問題かを一緒に考えて解決方法を探そう、と伝えましょう。
時には患者さんから離れて1人の時間をつくる
もう1つ、たとえば配偶者がうつ病と診断されたときには、自分も妻や夫という役割の前に1人の人間だ、という点を心にとめておいてください。「妻(夫)としてこうするべきだ」と思い込んでしまうと、お互いに辛くなります。むしろ「自分はここまでしかできない」と一線を引き、周囲に助けを求めながら、時には患者さんから離れて1人の時間をつくるようにしましょう。
うつ病の治療には長い時間がかかることがあります。ですから、配偶者や家族も患者さんに振り回されず、自分の生活を守ることを含めて、自分ができることを客観的に見ることのできる距離感を保つことが大切です。
適度な距離感は、患者さん自身のためにもなります。心配のあまり、干渉しすぎると「自分はダメ人間だ」「負担をかけて申し訳ない」と自責の念を募らせかねません。うまくいかないことがあれば、患者さんのペースに合わせて話を聞き、そのつど、対応を考えるといいようです。
子供は「抑うつ状態」をうまく言語化できない
近年は子供のうつも増えています。
子供は「抑うつ状態」という抽象的な気持ちをうまく言語化できません。うつや絶望感といった複雑な感情を言葉で表現できるようになるのは、だいたい20歳前後といわれています。
したがって子供のうつ病に気づくには、大人以上に行動に目を向ける必要があります。遅刻が多い、成績が落ちた、学校に行く時間になってお腹や頭が痛くなる、などが頻繁に見られるようなら気をつけて見守ることが大切。
さらに注意したいのは、中高校生の非行です。言葉にできない抑うつ的な気分を問題行動という形で表現していることがあるからです。
ところが、周囲の大人は背景に目を向けず、表に現れた問題行動だけを責めてしまいます。そうするとますます「理解してもらえない」という絶望感にとらわれ、最悪の事態が起こる可能性もあるので注意が必要です。
子供のうつ病は、児童精神科や児童・思春期外来など専門医を受診したほうがいいでしょう。
●本人
・飲酒しない:依存症の危険、再発の誘因
●周囲
・心配しすぎない:患者が「周囲に負担をかけている」と感じてしまう
・励ましすぎない:患者の焦りを誘ってしまう
・原因を追求しすぎない:結局は患者を責めることになる
・心配を伝えるなら解決策とセットで:穏やかに言う、具体的な手助けを提示する
出典:大野 裕『最新版「うつ」を治す』