G20声明が対応を求めたものの中で、投資家保護は金融庁の対応で抜け落ちていた問題だ。企業が投資家から資金を調達する目的でトークン(デジタル権利書)などを発行するICO(※)では、米国で連邦ベースの対応を証券取引委員会(SEC)が所管しており、日本は金融商品取引法で規制する必要に迫られそうだ。多くの投資家を対象にするなら、使途や財務内容の情報開示が必要になる。また、ICOを仲介する事業者は大手証券会社並みの厳しい規制が課されてもおかしくない。

テロ資金とマネーロンダリングの対策は送金先の信頼性確認がポイントで、国内事業者だけではカバーしきれず、国際統一ルールづくりが重要になりそうな分野である。株式やFXがそうだったように、今後仮想通貨の規制が進めば取引の透明性や安定性は確保される。が、未成熟な市場ならではの旨い儲け話はなくなっていくはずだ。

(※)新規仮想通貨公開。

今後想定される「仮想通貨」をめぐる規制強化の主なポイントは?
▼消費者保護(取引業者への規制強化)
BEFORE(NOW)
・取引業者の緩い登録制。
・取引業者の最低資本金は1000万円。
AFTER
・取引業者の厳格な登録制、免許制・認可制への移行。
・取引業者の最低資本金の引き上げ(例として、金融商品取引法でのFX業者の最低資本金は5000万円)。
▼仮想通貨技術を使った資金調達(ICO)への規制
BEFORE(NOW)
ICOを行う者に今後の計画といった詳細情報の開示義務はない。
AFTER
ICOを行う者への有価証券報告書の作成・開示が義務付けられる。
▼市場の健全性の確保
BEFORE(NOW)
ビットコイン取引所「マウントゴックス」の破綻や「コインチェック」の流出問題など、トラブルが続く。
AFTER
仮想通貨交換業者に対する取引の公平性確保が義務付けられる。
▼マネーロンダリング、テロ資金供与防止対策
BEFORE(NOW)
匿名での取引が可能。
AFTER
送金先の仮想通貨売買業者の口座開設についてルール適合状況の確認が義務付けられ、取引当事者、取引相手の本人確認が徹底される。
金融商品取引法が適用される!?
→規制の雁字搦めで、かつての乱高下がなくなり、ウマミも消えてしまうかも!?
町田 徹(まちだ・てつ)
経済ジャーナリスト
1960年、大阪府生まれ。日本経済新聞社に入社、金融、通信などを取材。その後独立し、2007年に「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」大賞を受賞。著書に『JAL再建の真実』。
(撮影=横溝浩孝 写真=iStock.com)
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