金融庁の啓蒙姿勢が災いしたのが、17年暮れにかけてのビットコインに代表される仮想通貨相場の急騰騒ぎだ。日本人投資家が殺到してビットコイン価格は17年後半に騰勢を強め、12月に1万9783ドルと最高値をつけた。しかし、18年に入ると一転、2月初旬には6000ドルを割り込んだ。取引も細り、3月初めの一日あたりの取引高はピークの4分の1になった。
18年1月に顧客の仮想通貨NEMがおよそ580億円分不正流出したコインチェック問題も、事業者の杜撰な実態や17年4月に施行した改正資金決済法の限界が浮き彫りとなった。流出時点の被害額は、2014年に約465億円分のビットコイン消失事件で破たんし、資金決済法改正のきっかけをつくったマウントゴックス事件より大きい。
その後、慌てた金融庁が利用者保護に急旋回。16社ある登録業者と同じく16社あるみなし業者の緊急検査に乗り出したところ、4月6日までに内部管理体制の不備などを理由に業務停止命令もしくは業務改善命令の行政処分を受ける事業者が9社も出た。みなし業者のうち6社は登録を断念、廃業を決めたという。今後は、より厳しい参入規制や日常の杜撰な経営を見逃さない制度づくりが急務である。
テロ資金対策では、国際統一ルールも?
さらに、注意を払う必要があるのが、3月後半にアルゼンチンで開かれた20カ国・地域(G20)財務大臣・中央銀行総裁会議が共同声明で指摘した、国際的な対応を要する諸課題だ。声明は仮想通貨を「ソブリン通貨(法定通貨、政府や政府機関が発行する)の主要な特性を欠いている」ので通貨ではなく、「暗号資産」だと位置付けた。
そのうえで、「消費者および投資家保護、市場の健全性、脱税、マネーロンダリング、並びにテロ資金供与に関する問題」と規制が必要なポイントを列挙。国際的な規制づくりと各国の対応の監視という役割を政府間機関FATF(金融活動作業部会)に委ねた。
G20声明が必要性を指摘した制度見直しに関し、日本も対応を迫られている。しかも、日本は08年にFATFからテロ資金対策やマネーロンダリング予防策について法制度上の不備の指摘を受けながら、抜本策を怠り、14年のFATF全体会合で名指し批判された“前科者”。その因縁の機関が仮想通貨のルールづくりの推進役となり、諸外国以上に真摯な対応をせざるをえない状況だ。