細部は違っても、こうした子どもとのやり取りは、子育て中の家庭ではよくあることではないでしょうか。そして、そんなとき親は、「この子は、どこまでやったら私がキレるのか試しているに違いない」とか、「もしかして、うちの子はちょっと性格が悪いのかな?」などと思ってしまいがちです。

『無理なく着実に才能を伸ばす! 脳に任せるかしこい子育て』(菅原 洋平、菅原 未涼著・すばる舎刊)

しかし、これは間違いです。こうした行動は生理学的な脳の仕組み、中でも脳内でのドーパミンという神経伝達物質の働きが、子どもに自然とそうした行動をとらせているだけです。子どもの性格は、実はまったく関係ありません。

親の強い反応が「リピート」を生む

私の専門は、脳のリハビリテーションです。効果的な脳のリハビリテーションを行うには、脳内でどんな神経伝達物質がどんな働きをしているのか、よく理解する必要があります。先ほど挙げた事例でも、こうした脳の生理学的な視点から見ることで、子どもの不可解な行動を引き起こしている“本当の原因”が見えてきます。

子どもの脳が何か新しい刺激を受けたとき、脳内ではドーパミンという神経伝達物質が分泌されます。このドーパミンには、「分泌前にした行動に過剰に注意を向ける」という作用があります。

おもちゃの例で言えば、窓ガラスにこれをたたきつけて遊び始めた子どもの行動に、親が激しく反応して、これまでにはない表情や言動をしました。これは、子どもの脳にとっては新しい刺激ですから、大いにドーパミンが分泌されます。すると、ドーパミンの作用で、怒鳴られる前にしていた「おもちゃを窓ガラスにたたきつける」という行動に意識が集中させられて、子どもはそれを繰り返そうとします。

子どもはドーパミンの作用で行動しているだけなのですが、親の視点からこの行動を見ると、「言えば言うほど、子どもが挑発するようにその行為を続ける」かのように映る、というわけです。

もじもじするのは「集中しよう」としているから

もうひとつ、例を挙げましょう。ここぞという大事な場面で、子どもがもじもじと体を動かし続けることがあります。わが子のそうした様子を見た親は、「なんで、こんな大事なときに……」「ホントに落ち着きのない子だなぁ……」などと思うのですが、実はこれも、脳の仕組みが引き起こす現象です。