子供を「上流ロード」に乗せるには、なにが有効なのか。「プレジデント」(2017年2月13日号)では、子育てをめぐる13のテーマについて識者にアドバイスを求めました。第10回のテーマは「脳科学」です――。

頭の中で立体を回転させて認識する能力が鍛えられる

知育玩具は、日本では学習玩具とよく混同される。学習玩具は、たとえばかるたや積み木の絵合わせなどで、文字や計算を覚えさせようといったもの。対して知育玩具は、人間の基盤となる知覚、すなわちものごとの認識能力を養うおもちゃだ。

乳幼児期からの早期教育で重要なのは、知識の習得よりも、多様な知覚経験を積むことだ。そのうえで、知育玩具は大きな効力を発揮する。

私は自由に形を組み替えられる立体パズルを推奨する。立体パズルはメンタルローテーションを育むのによいと考えている。メンタルローテーションとは、脳が頭の中で立体を回転させて認識する能力をいう。物を立体として認識するのは目ではなく脳の働きだ。それを回転させることで、物の形の違いや遠近の距離などを判別している。

いわば視点の変更能力であるメンタルローテーションは、非常に重要な能力だ。ものごとを掘り下げて考える探求型の「垂直思考」、横並びにものごとを結びつけて考える応用型の「水平思考」がよくいわれるが、メンタルローテーションの発達した人は、この2つを組み合わせた「立体思考」の能力が高い。立体パズルの遊びは、その発達に寄与する。いわば、賢さの基盤をつくるのである。

立体パズルの遊びは、何をつくるかを予想・計画、そして行し、その成果や失敗を振りる内省というプロセスで展開る。これは大人でも日常の行で無意識のうちに行っている。そうした試行錯誤の積み重ね遊びを通して経験していくこが、幼少期にはとても大切だ。