SNSの危機管理がなおざりになっている

悪質タックルは警察に傷害事件として告発されている。検証は捜査機関に任せるべきだ。そのうえで日大の第三者委員会がやるべきことは、再発防止策をまとめることだろう。しかし、検事出身者を中心とした弁護士7人からなる委員の構成をみると、「指導者の指導と、選手の受け取り方に乖離があった」とする日大の主張にこだわっているようにみえる。そうした日大の主張にあわせた結論が出てくるようであれば、第三者委員会を設置した意味はなく、その時は日大そのものが大きな危機を迎えることになるだろう。

現代社会では、SNSが普及し、可視化が進んでいる。企業・団体から個人に至るまで、不道徳、非常識、コンプラ違反、隠蔽、改竄について、ごまかしや言い訳は通用しない。

危機管理の視点では、ネット炎上する前の段階で問題を見つけ、対応しなければならない。いわゆる危機管理広報の専門家がいうような「記者会見でのメディア対応」や「頭の下げ方」「言葉の使い方」といった対策では不十分だ。記者会見を開かなければならない事態になる前に、収拾を図らなければならない。それが正しい危機管理のあり方である。

日大は、悪質タックルの動画が公開され、SNSで話題になった時点で、率直に謝罪すべきだった。そのとき対応すべきは、大学のトップである田中英寿理事長だ。だが5月19日、内田前監督が関学大への謝罪後に大阪国際空港(伊丹空港)で取材を受けるまで、日大関係者は誰も姿を現さなかった。トップが出てこない、広報の対応もダメという点に、日大の組織としての根深い問題が存在するといえる。こうした組織の問題に、第三者委員会がどう斬り込んでいくか、注視したいと思う。

ちなみに日大アメフト部のホームページには、5月10日に掲示された「本学選手による反則行為により大きな混乱を招き、深くお詫び申し上げます」という謝罪文が、今も掲載されたままである。

(写真=時事通信フォト)
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