変革期のリーダーには表向きのスキルに加え、人を効果的に動かすための“闇の力”が必要だ。企業改革に通じたコンサルタントが秘策を明かす。

ダークサイド・スキル=コミュニケーション力、人心掌握術

AI(人工知能)の発達で産業のあり方が根本的に変わり始めている。日本を代表するメガバンク各行が数万人規模の人減らしを宣言したのが話題だが、今後は銀行など金融だけではなく、製造、物流、サービスなどさまざまな分野で大きな変革が起きてくる。いま産業界は「平時」ではなく明らかに「有事」にある。

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有事に必要とされるのは、昨日の延長線上にある「改善」ではなく、やり方を大胆に変えていく「改革」だ。もちろん有事においても既存の事業のなかには改善型の事業が多数あり、それはそれで重要だ。しかし読者が有事の改革型のリーダーを目指すなら、それにふさわしい動き方をしなければならない。以下に述べるのは、改革型リーダーを目指す人が備えているべきビジネス・スキルの話である。

ビジネス・スキルには、論理的思考力や財務会計知識など、MBAの基礎科目として学ぶ「ブライトサイド・スキル」がある一方、コミュニケーション力や人心掌握術など、人や組織の行動に影響を与えるヒューマンスキル、ブライトサイド・スキルとの対比でいうと「ダークサイド・スキル」も存在する。

どちらも重要だが、組織に変革をもたらすリーダーたらんとするなら、泥臭いダークサイド・スキルを身につけることも必須である。

有事において上司や部下の心をつかみ、思うとおりに組織を変革していくためにはどうするか。具体的に解説していこう。

LESSON 1
ダメなリーダーを追い落とす

改革が求められる有事モードなのに、大胆な改革に及び腰になり、現状に固執しがちな上司がいる。本人に悪意はなくても、変化を嫌う上司が権力を握っていると、改革案がつぶされて事業が危機にさらされる。また、パワハラ上司やセクハラ上司、私利私欲が目立つ上司がいまだに存在することも事実である。こうした上司には退場してもらうのが組織のためだ。

改革型のリーダーと、それ以外のリーダーの違いは何か。最大の違いは、志の強さだ。人間は誰しも内面に弱い部分を抱えている。弱い部分は欲となり、それが肥大化すると保身や現状肯定につながってしまう。もちろん改革型の人材も他の人と同じようにドロドロした欲を抱えている。しかし大義や志で自身の欲望をコントロールしているわけだ。

人間の弱さを見分けるには2つの指標がある。ひとつは、何にビビるかである。人のケンカを見て心臓がバクバクする人は、暴力的な脅しに弱いといえる。もうひとつは、何に目がくらむか。お金や異性に執着する人は、そこが弱点になる。

上司の交代を望むなら、大義を前面に押し出したうえで、提案型の表現をすることが大切だ。たとえば「いま会社に必要なのは、副作用を伴う改革です。しかし現在の上司はむしろ改善型に向いている平時のリーダー。他部署の○○さんのほうが向いています」と言えば、私心で追い落とそうとしているわけではないことを伝えられるだろう。