LESSON 6
有事にすばやく動く

情報収集のために潜り込ませていた腹心(スパイ)は、いざ事を起こすときにも活躍してもらえる。たとえば効率化のために業務フローを刷新するとしよう。現場は一時的に混乱するかもしれないが、長期的に見れば必要な施策だ。このとき上から施策の目的を伝えることは必須だが、日々の業務に追われる部下たちとは温度差があるケースも多い。腹心の出番はここだ。内容は同じでも、自分と同じ立場の人間から説明されると響き方が変わる。同僚から「この見直しで将来は仕事が楽になる」と聞けば、部下たちも納得しやすい。

潜り込ませていた腹心に、側面支援を頼む必要はない。志の部分でつながっていれば、具体的な指示をしなくても意を汲んで動いてくれる。そこまでの関係性がないのに側面支援を頼むと、周囲に見破られ、「裏工作しやがって」と反感を買いやすい。

有事の際には連絡手段にも気を配りたい。平時においてはメールベースのコミュニケーションが便利だが、いざというときにはスピードが遅すぎるし、迫力も出ない。また、際どいことを頼まなくてはいけない場面もあるが、メールでは証拠が残ってしまうため、婉曲な伝え方になって真意が伝わらないこともある。スピーディに、かつこちらの思いを的確に伝えるには、メールよりメッセンジャー、さらにメッセンジャーより携帯電話のほうがいい。

これは対部下だけでなく、対上司でも同じだ。ビジネスシーンで電話が使われる機会は減ってきたが、有事にはむしろ威力を発揮するのだ。

木村尚敬(きむら・なおのり)
経営共創基盤パートナー 取締役マネージングディレクター
IGPI上海執行董事。著書『ダークサイド・スキル』で注目。
 
(構成=村上 敬 撮影=永井 浩 写真=iStock.com)
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