世界中の人々が投資信託で資産を大きく増やしています。ところが日本人の多くは失敗しています。なぜなのでしょうか。ファイナンシャルアドバイザーの福田猛さんは「AIや再生可能エネルギーなど話題を集めた『テーマ型投資信託』を一括購入した人ほど損している。投資信託では人気のものを買ってはいけない」と言います――。

※本稿は、福田猛『投資信託 失敗の教訓』(プレジデント社)の一部を加筆・再編集したものです。

買った途端に下がる「テーマ型投資信託」

世の中で「人気のもの」は実際にお金を払う価値のあるものが多いと思います。人気の電子レンジ、人気の自動車などは消費者が実際に購入して使用し、「良かった」と評価する人が多く、それを聞いた人が購入するのでますます人気になるわけです。その分野に詳しくない消費者は特に「人気のもの」を探せば失敗しにくくなります。

しかし、投資信託に関してはまったく逆の現象が起こります。埼玉県の田中義男さん・55歳(仮名)は2014年、当時話題沸騰だった人気の投資テーマ「シェールガス」に投資をする投資信託を金融機関に勧められ、資産の半分に相当する1000万円を投資しました。

ところが、1年半後の成果はマイナス45%。今も含み損を抱えたままで不安になり、弊社へご相談にいらっしゃいました。「人気投信ランキングでトップだったから買ったのに……」と思っていた田中さんは何が間違っていたのでしょう。

「人気のものほどよく損する」。このことを理解せずに投資信託を購入し、後悔する人が日本中にいます。そこには「人気のテーマ型投資信託」という厄介な投資信託があります。「人気のテーマ型投資信託」をなぜ買ってはいけないのでしょうか。

「テーマ型」と呼ばれる商品は、AI(人工知能)や再生可能エネルギー、REITファンドなど、1つのテーマを決めて関連する企業に投資する投資信託のことです。そのときどきに話題になっているテーマで投資信託が設定されます。

銀行や証券会社など、投資信託を販売する会社から見れば、テーマ型投資信託は非常に販売しやすい商品です。なぜなら、テーマに話題性があるため、多くの人が関心を示すからです。

多くの人が「このテーマはいまが旬だから儲かりそうだ」と考えます。運用会社(投資信託を作っている会社)は、多くの人が関心を示しそうなテーマ=たくさん売れそうなテーマを設定して投資信託を作るのです。

具体的な例で説明しましょう。以前、中国株ファンドが話題になったことがあります。これは、中国株に投資する投資信託ですが、これも一種のテーマ型投資信託と言えます。どのような経緯をたどったのか、簡単な図にしました(図1)。

線は中国株の株価の値動きを示しています。Aの時点では中国株の株価が低迷しています。この時期は話題性がなく、興味を示す人も少ないので投資信託を発売しても売れません。

その後、株価が上昇を始めると、中国株が注目され始めます(Bの時点)。新聞や雑誌でも取り上げられるようになり、話題になっていきます。運用会社は「これなら売れる」と判断して、中国株ファンドの販売準備を始めます。

しかし、実際に中国株ファンドとして販売をするまでには、時間がかかります。結果的にCの時点で設定されるケースが増えます。この時点で株価はピークを迎えますが、それがわかるのは、しばらくたってからです。実際にCの時点では「まだまだ上がる!」と市場は盛り上がっています。話題性も増して、中国株ファンドは大いに売れるでしょう。

みんなが「良い!」という投資対象はすでに価格が上昇しており、割高になっていたり、バブル化していたりするものもあります。そんなタイミングで投資をしたら良い結果にはなりにくいですよね。

株価が下がり始めたら、Aの時点やBの時点で中国株に投資して、利益が出ている人の中には「いまのうちに売却して利益を確定しよう」と考える人も出始めます。売却する人が多くなれば、株価が下がります。

すると、こう心配する人が増え始めます。「これ以上、下がったら利益が少なくなってしまう……」結果的に慌てて売却する人も出始めて、さらに株価が下がることになります。そして、株価が下がる→売る人が増える→株価が下がる……、というスパイラルに陥ります。

こうなると、株価はどんどん下がっていき、Cの時点で中国株ファンドを買った人は、損をすることになるのです。儲かったのは、たくさん投資信託を販売して手数料を稼いだ金融機関だけとも言えそうです。