相場は上昇と下落を行ったり来たりします。上昇局面であれば、日経平均や東証株価指数(TOPIX)に連動する「ベンチマーク運用」の投資信託でも成果が出ます。しかし下落局面の場合、そうした投資信託では必ず損が出ます。損が出るとわかっていても、株式を持ち続けなければいけないというルールがあるからです。ファイナンシャルアドバイザーの福田猛さんは「ベンチマーク運用とフル投資ルールについて理解する必要がある」といいます――。

※本稿は、福田猛『投資信託 失敗の教訓』(プレジデント社)の一部を加筆・再編集したものです。

信じて託すと損をする「フル投資型」

毎日仕事も家事も忙しい中村裕子さん・47歳(仮名)は、大学進学を控えた子どもの教育費や老後資金のために資産運用を前向きに考えていました。しかし、資産運用といっても定期預金から株式、FX、不動産など多種多様な方法があります。中村さんは、「どれがいいのかわからない」と思って踏み切れずにいました。

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そんなとき、友人から「投資信託はプロの担当者に運用を任せられる。銘柄選びや管理は自分ではできないけれど、プロが代わりにしてくれるから安心」と聞き、2015年6月、ネット証券を通じて人気ランキング上位の「日本株式で運用する投資信託」を購入しました。

ところが、1年後の2016年6月、運用成績は約マイナス20%だったのです。「投資信託はプロが運用しているのに、なぜ損をするのだろう?」。そんな疑問を持った中村さんは、弊社のセミナーに参加されました。

中村さんと同じ疑問を持ったことのある投資家は多いのではないでしょうか。日本株で運用をする投資信託なら、日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)が大きく下落すると、同じくらい下落する投資信託がほとんどです。「相場が悪くてもプロが運用するなら、(プラスは無理かもしれないけれど)大きなマイナスにはならないのではないか?」と期待して投資信託を購入したのに、結果は“相場が悪ければプロがやっても損する”と知った中村さんは、ガッカリしてしまいました。

実はここに、投資家が運用会社に求めていること(投資元本を増やしてほしい)と、運用会社の考え方にズレがあります。そのことを理解せずに運用会社に「信じて託す」と、その先に失敗が待っています。

投資信託は、商品ごとに運用ルールが決められています。そして運用ルールは自由に決められるわけではありません。たとえば投資信託協会が定めるガイドラインのひとつには、「投資信託の信託財産の総額の2分の1を超える額を有価証券に対する投資として運用することとする」という文言があります。

わかりやすく言えば、こうなります。仮に日本株に投資する投資信託であれば、資産の50%以上を常に日本株で運用しなければならないのです。

逆に考えれば50%までであれば、投資家から託されている資産を現金で持っていてもいいということになります。相場が悪いときに資産の100%を日本株に投資していれば、大きく目減りしてしまいます。そのようなときには、50%までを現金化して様子を見る(投資家から預かった資産を守る)ことができるのです。