専門家でも予想は外れる

中国株は実際に、2001年から2007年にかけて大きく上昇しました。先ほどの図1で言えば、Aの時点が2001年、Cの時点が2007年です。いま考えれば、2001年に購入して2007年に売却すれば大きな利益を手にできました。ただ、これを判断するのはプロでも難しいのですが……。

Aの時点の2001年当時の状況を振り返ると、こんなふうになります。2000年にITバブルが崩壊して、世界中で株価が下がっていました。特に新興国不安が広がっていたのです。たとえばアルゼンチンは、借金を返済できないという債務不履行に至り、国家が破たんの危機に陥りました。

当時の中国は、新興国の1つでしたし、株価は低迷していました。そんなときに、「新興国はいずれ成長するから、買っておいたほうがいいですよ」と言われたら、あなたは買いますか? 買いませんよね? 他の人も同じです。なので、中国株に投資する投資信託を発売してもほとんど売れないでしょう。

一方で、2007年はどうだったでしょうか。当時の新聞を開くと、景色がまったく違います。「中国GDP成長率が10何%」という見出しが毎日のように掲載されていました。また、書店へ行けば中国株の本のコーナーができていました。

ネット証券の投資信託ランキングを見ると、上昇率のトップ10がすべて中国株関連だったこともあります。ランキングは過去の価格のデータを使っていますから、2007年時点では中国株ファンドが隆盛を極めていたわけです。翌年の2008年には、北京オリンピックが控えていましたので「あと1年は上昇する」と言っていた専門家も多かったのです。

ところが、2007年秋にピークをつけた中国株は、その後、下落していきました。株価がピークに達した2007年11月に設定された中国株ファンドの行く末を見てみましょう。図2は、ある運用会社の中国株ファンドです。2007年11月30日に設定されています。

投資家から集めたお金の残高を純資産額と呼びますが、この投資信託は販売開始時点で約270億円の資金を集めています。これは新規設定の投資信託としては大きな金額です。さらに、約2カ月間で純資産額はさらに410億円まで増加しました。

では、価格はどうでしょう。先ほども説明しましたが、投資信託の時価を示す価格を基準価額と呼びます。その基準価額は、投資信託の設定以降、一気に下落していきます。

設定当初=1万円だった基準価額は、1年後の2008年10月末には約4000円まで下がっています。約60%の値下がりです。多くの人が、耐え切れずに売却してしまったのではないでしょうか。仮に5年後に元の価格まで戻ったとしても、投資期間中はとても不安に思うことでしょう。