――同じ8時間労働でも、仕事によって疲れ方が違うということですね。

はい。

僕に面白い友人がいます。社長でまだ若いのですが「1日3時間しか働けません」と言うのです。「なんで?」と聞くと、「必死に脳をフル回転させて考えているので疲れるんです」と。「それで後の5時間は何をしているの?」と尋ねると「社員の背中を叩いたり、からかったりして遊んでいます」と言うのです。

「セクハラ、パワハラに気をつけて」と忠告しておきましたが、本当に脳をフルに使っていたら、3時間くらいが限度だと思いますね。

――集中力が高いとそうなるんですね。

はい。本当に集中すると周りが気にならない状態になります。僕も電車の移動で本を読み、数駅乗り過ごすことがよくあります。

読書に没頭するあまり、周りの音が聞こえなくなるのです。

――数駅でよかったですね……。でも、クリエーティブな仕事の評価はアウトプットなので、クタクタになるまで働いたら逆に効率が落ちるかもしれませんね。

その通りです。自ら働き方改革が必要になる。仕事を早く終えて、「人・本・旅」で脳に刺激を与えないと、画期的なアイデアは生まれません。

Answer:脳のメカニズムを知り、自ら「働き方改革」を

出口治明(でぐち・はるあき)
立命館アジア太平洋大学(APU)学長
1948年、三重県生まれ。京都大学卒業。日本生命ロンドン現地法人社長・国際業務部長。ライフネット生命社長・会長を経て現職。
 
(構成=八村晃代 撮影=市来朋久 写真=iStock.com)
【関連記事】
自分の知能を「爆発的に進化」させる方法
仕事がデキる人ほど適当に手を抜いている
脳を騙して「4倍働いて2倍遊ぶ」方法
「徹夜の充実感」は脳内モルヒネの騙し
ライバルを気にしすぎるのは「暇な証拠」