プレジデント誌の好評連載「悩み事の出口」。ライフネット生命の創業者で、立命館アジア太平洋大学学長の出口治明さんが、読者の悩みに答えます。今回のお題は「同僚が何をしているか気になる」。出口さんは「もっと仕事をしてください」といいます――。
Q:同僚が何の仕事をしているか、気になってしまいます……
一般に人間は知りたがり屋で、他人と比べたがる動物です。職場の同僚が何をしているのか気になるのは仕方がないかもしれません。
――どんな案件を抱えているんだろうとか、大きなヒットを出すんじゃないだろうかとか……ライバルの動きが気になって仕方ありません。会社員時代、出口さんはどうでしたか?
僕は他人のことは気にしない性分でした。それに周りを気にすれば集中力が低下して仕事も遅れるし、何ひとついいことはないと思います。
――ライバル同士の競争は会社にとってプラスのように思いますが。
はい。ライバルの存在は大切です。競っていないと人は怠けます。歴史を見ていると間違いなく「競争は進歩の最大の原動力」ですよね。
でもそれは、他人の動きを必要以上に気にするのとは意味が違います。ライバルの姿を見て「俺も頑張るぞ」とやる気を高めるのはいいのですが、他人をただ気にするのは時間のムダです。
――競争心がある人は昇進するんですか?
いえ、そうとも限りません。ずっと昔、互いをライバル視していた同僚がいました。彼が何をやったかというと、ライバルより早く会社に来て当時は職場に1台しかなかった計算機を独占する。ライバルが「計算機貸して」と頼むと、「ボスから頼まれた仕事を早くやらないといけないから」などと言って手放さない。
その彼は早くに出世レースから外れてしまいました。出世欲があまり前面に出ていたら、みんなから煙たがられてしまいますよね。