海浜鉄道(地元では「湊線」と呼ぶ)の廃止議論は、前市長時代からあったが、本間氏は粘り強く交渉を続け、現在の第三セクターに移行させた。「将来に向けて、行政の責任で残すべき社会インフラ」の姿勢からだが、さらに驚くべき施策を打ち出している。

「統合した学校」を沿線駅前に設置

少子化で生徒数が減った市内の小学校と中学校を統合させて、沿線に設置予定の新駅前に新設する計画なのだ。「候補地は、現在の平磯駅と磯崎駅の間」(本間氏)と話し、4年後の平成33年度の開校と新駅設置をめざす。

新駅が設置される予定の場所(写真提供=ひたちなか市)

「義務教育の学校を移転させて、その学校の近くに新駅を設けるのは非常に珍しいと聞きます。地方自治の視点でも興味深い取り組みです」(現地事情にくわしい経済誌の編集者)

どういうことか。本間氏が説明する。

「まず教育面では、1学年1クラスのような学校だと、進級してもクラス替えがなく、生徒も“他者との交わり”で多様性が育ちにくいのです。新設校では1学年2クラスの確保を見込んでいます。経済面では、駅前に移転すれば、生徒も安心して通学できますし、市がスクールバスを用意して通学させる場合(約1億円)と比べて、試算では何千万円も安くなります。一方で、移転費用や統合費用はかかりますが、市の未来像として、行政の責任で行う必要があると考えました」

事業費78億円の「延伸計画」

冒頭で紹介した「3.1キロの延伸計画」とは、現在の終着点・阿字ヶ浦駅から延伸し、終着駅は「ひたち海浜公園の西口駐車場近く」になる見通しだ。「現在は勝田駅から有料バスが発着する、年間200万人集客の海浜公園への輸送需要を取り込み、鉄道会社の経営を安定させたい。そうすれば鉄道の存在意義もより高まる」(本間氏)という考えだ。