「あんたは私のATM、外でしっかり稼いでこい」

会社だけではなく、家でも、妻をはじめとした家族から振り回されている人もいるだろう。

あるIT企業に勤める40代の男性は、他人を振り回す妻に悩まされているところだ。結婚前、妻は社交的で明るく、魅力的な女性だった。しかし、結婚を機に退職して専業主婦となると豹変し、夫に「あんたは私のATMなんだから、外でしっかり稼いでこい」と言うようになった。気に入らないことがあると、すぐに夫に手をあげる。耐えかねた夫が家を出て行こうとすると「いっそ私を殺して」と包丁を持ち出す始末だ。夫は真剣に離婚を考えているが、妻の反応が怖くて切り出せずにいるという。

「妻が夫を振り回している典型的なパターンですね。そもそも、夫婦関係というのは、お互いの利益が相反する部分もあるという認識を持っておく必要があります。妻にとっては、夫が黙って外で働き、その稼ぎが多ければ多いほどいい。とはいえ、妻は浪費しているのに夫の小遣いは少ないなど、ATMになる代償がなければ、夫にストレスがたまってしまうことになる。こういう妻に、離婚を持ちかけると、怒った妻が会社に来たり、夫の友人に連絡し始めたりする。男性は、自分のポジションが脅かされることもあるのです」(精神科医・片田珠美氏)

▼泣き寝入りせず、部分交渉を行う

口では妻に勝てないから、波風を立てないためには黙っているのが一番。そんなふうに思ってしまっては危険だ。夫が言いなりになっていると、妻はどんどん鈍感さを身につけ、夫が疲弊してもなお振り回し続けることになる。では夫は、どのようにこの状況を打破していくべきか。

「ATM夫になっている場合、だいたいは妻が夫の給料を差し押さえています。妻の言いなりにならないためには、給料の振込先を変えてもらうようにするのもいいでしょう。妻が怒ることがわかっていても、ある程度は交渉しないといけません。まったく波風立てずに家庭生活を送るのは無理。あるいは、部分交渉も有効です。たとえば妻が1日1000円しかお小遣いをくれないとしたら、付き合いもあるし、この金額ではやっていけないから、1日1500円にしてほしいと頼んでみる。このように、簡単なところからはじめて、徐々に交渉のレベルを上げていくのがコツです」(同上)

振り回されやすい人の特徴の1つに「孤立している」ことが挙げられるが、同じ傾向は家庭内でも認められる。振り回す人が家族を支配するために、実家や友人との関係を全部切れ、と要求するのがその代表例。逃げる場所や、正確な判断をする機会を奪うのである。