企業の内部留保の増加が問題となっている。利益が大きく改善しながら現金をため込み人件費に回さないと批判されているが、配当も利益の増加に比べ低い水準にとどまる。純利益に占める配当の割合を示す配当性向は、東証1部上場の主要500社の平均は31%で、欧州の主要企業の半分程度にすぎず、むしろ低下傾向にある。ニッセイ基礎研究所の上野剛志シニアエコノミストは、この背景に日本企業特有の横並び意識があると指摘する。

「日本企業の配当性向は30%前後に集中していますが、これは突出を嫌うためです。減配や無配を恐れて他社と同じ水準にし、翌年以降も安定した配当をすることを優先して剰余金があってもため込んでしまう」

どうすれば企業にお金を使わせることができるようになるのか。

「人口減少で将来にわたって低成長が続くことが予想されるうえに、円安や原油安もいつ揺り戻しがあるかわからない。そうなれば、企業は人件費や配当に回すよりもいざというときに備えることを優先してしまいがちです。企業が成長イメージを持てるよう規制緩和などで政策的に促していくことが必要です」(上野氏)

もっとお金を使える環境づくりが欠かせない。

(図版作成=大橋昭一)
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