人々の悲願「賃上げ」を果たす方法とは

今回の総選挙に敗れた希望の党は、企業から内部留保課税を徴収することを公約に掲げた点でも批判を浴びた。ただ、財務省も課税を検討中だという。内部留保とは、企業が蓄積した利益剰余金を指し、財務省の調査では2016年度末の時点で406兆円を超えて過去最高に達し、「もっと設備投資や従業員の賃金に回すべきだ」と課税派は主張する。

経団連の榊原定征会長は内部留保課税に反対の立場を示す。(ロイター/AFLO=写真)

だが、原価や諸経費、賃金、法人税、株主への配当を差し引いて残ったのが内部留保で、内部留保課税まで課すのは二重課税だという指摘がある。しかも、内部留保は企業の手元にある現預金だけを指していない。事業に用いられる生産設備などの実物資産も該当し、設備投資にも課税することになる。「むしろ企業側は設備投資を減らして経済活動を停滞させる」と指摘するのは、第一生命経済研究所経済調査部の首席エコノミストの熊野英生氏だ。

内部留保課税で賃金上昇を促すことも期待薄だ。法人税率を上げれば、企業は課税対象の純利益を減らそうと賃上げを行う。一方、内部留保は純利益に課税するわけではないので、賃上げの動機が働かない。

賃上げや設備投資喚起には、減税が効果的だと熊野氏は指摘する。「増加分の特定が難しいが、ベースアップ額や設備投資額に応じて税金還付を行うほうが効果を期待できる」。

(写真=ロイター/AFLO)
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