実行すれば米国の核報復は必至
国際社会からの批判を無視して、挑発を続ける北朝鮮が、今年9月開発成功を主張した水爆による電磁パルス(EMP)攻撃を懸念する声が強まっている。
電磁パルス攻撃では、発射した弾道ミサイルの核弾頭をあえて目標地点のはるか上空で爆発させる。そのため、爆発の衝撃波は地上まで届かないが、同時に発生したガンマ線が、成層圏の大気の分子から電子をはぎ取ることで生じる、強力な電磁波のEMPが地上へ届く。
このEMPが変電設備やコンピュータなどの電子機器を起こさせ、大規模な停電などにより都市機能をまひさせるという。実際、1962年に米国が行った実験では、爆心地から1400kmも離れたハワイで街灯300個が停電した。
だが、国際安全保障問題に詳しい静岡県立大学グローバル地域センター特任助教の西恭之氏は指摘する。
「核爆発の高度が高すぎるとガンマ線は成層圏に届くまでに弱まり、EMPが十分に発生しない。低すぎると届く範囲が狭くなります」
北朝鮮が米国に壊滅的打撃を与えるには、相当な威力の核爆発と高度な制御がに故障や誤作動不可欠だ。しかも、米国の核戦力は電磁パルス攻撃を受けた中でも反撃できる設計で「米国やその同盟国に核電磁パルス攻撃を行えば、核報復を免れない」(西氏)ため、北朝鮮にとっては自滅行為ともなりうる。
(写真=AP/AFLO)