日米同盟を基軸に、「一帯一路」と「インド太平洋」の調整を

14億の人口を擁し、国内総生産(GDP)で間もなく日本の3倍の規模になろうとする中国を、単独プレーヤーとして牽制する能力は日本にはない。仮に10年前にはありえたとしても、今はない。アメリカとの同盟関係を基軸に、「インド太平洋」戦略を進めていくしかない。ただし、中国の隣国であり、尖閣諸島の問題も抱える日本であれば、「一帯一路」構想と「インド太平洋」構想との間の調整にも、率先した役割を果たすべきではあるだろう。

日本は「海洋の法の支配」に深い関心を持つが、南シナ海からインド洋を経て、アデン湾に至る地域で、「一帯一路」と「インド太平洋」は、ぶつかる。普遍主義にそった国際規範の重要性を強調しながら、常に中国とアメリカが協調的な対話を継続できるような環境の整備に尽力すべきだ。

次回は日本の大きな関心事項である、北朝鮮問題について論じる。

篠田英朗(しのだ・ひであき)
東京外国語大学教授 1968年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業、同大学大学院政治学研究科修士課程修了、ロンドン大学(LSE)大学院にて国際関係学Ph.D取得。専門は国際関係論、平和構築学。著書に『国際紛争を読み解く五つの視座 現代世界の「戦争の構造」』(講談社選書メチエ)、『集団的自衛権の思想史――憲法九条と日米安保』(風行社)、『ほんとうの憲法 ―戦後日本憲法学批判』(ちくま新書)など。
(写真=新華社/アフロ)
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