典型的な近代化論の中には、経済的発展が、必然的に政治的民主化をもたらす、とする立場が根強く存在する。事実、中国の民主化は、数十年にわたって予言されてきたテーマであった。経済成長が鈍化した際に何が発生するかは、まだわからない。だがそれはまだ2018年段階の問いではないようだ。世界は、超大国として中国を迎え入れた後の国際秩序をどう構想するかについて、まだ格闘している最中なのだ。

中国は、むきだしの経済成長や資源獲得を目指していると信じられてきた。しかし習近平総書記が打ち出した「一帯一路」構想は、より体系的な国際秩序観を反映していると考えられている。最近、中国政府は、「一帯一路」の公式英訳を、「One Belt One Road」から「Belt and Road」に変えた。前者の訳であると、あたかも一つのルートが線でつながっていくだけのような印象を与えるからだろう。実際には、「一帯一路」は、複数の陸上の線と沿岸部の線で構成される地域概念である。ただしその特徴は、中国を起点にして、地域秩序が帯状に伸びているようなイメージが感じられることだろう。「一帯一路」は、中国が目指す国際秩序の仕組みを、地理的概念として表現している。

「一帯一路」vs.「インド太平洋」

ロシアは、ロシア主導のユーラシア経済連合と、中国主導の一帯一路を結びつける努力を行っている。中国主導だがロシアも協力する上海協力機構(SCO)は、2017年にインドとパキスタンを正式に加盟国として迎え入れ、中央アジアからインド洋に展開する国際機関となった。安全保障上だけでなく、経済協力のためのプラットフォームとしての意味も持つ。アメリカはSCOへのオブザーバー資格を申請し、これを拒絶されたことがある。SCOが、アメリカの覇権に対する対抗勢力としての性格を持っていることは、明白である。

昨年暮れに公表されたトランプ政権初の『国家安全保障戦略(National Security Strategy)』では、日本の安倍首相が熱心に推奨している「インド太平洋(Indo-Pacific)」の概念が採用された。特定の国を封じ込める意図はないとしているが、中国の拡大する影響力をけん制する性格を持っていることは、明白である。トランプが大統領に就任せず、アメリカがTPP(環太平洋連携協定)の盟主となっていたら、経済面での世界の地域的分立がより一層明らかになるところであった。