介護期間1~2年なら頑張りがきくが、5年超えると「刑罰」

これ以上、何を大事にして、どう頼まれたら、私は許されるのか……。「大事にしろ」と言う人は、その場限りしか滞在せず、「頼むね」と言う人は絶対に頼まれない。そうした事実は、介護の現場と同じくらい、私を苛むものだった。

*写真はイメージです。(写真=iStock.com/Nayomiee)

好きで老いる人はいない。好きで体が不自由になる人もいない。介護を必要としている本人のほうが、情けなく、つらく、悲しく思っていることだろう。

しかし、老いた親が、その孤独や恐怖、不安や、痛み、不自由さ、ありとあらゆる不平不満をぶつける先が、こともあろうに主たる介護者(私)に集中することが問題をより複雑化させるのだ。

そして、私はこう思った。

「このままでは、母のことが大嫌いになる」。だから、その前にこの問題に終止符を打ちたかった。もし母が私のあずかり知らぬところで、ある日突然亡くなれば、私は親不孝を泣くだけですむ、とすら思っていたのだ。

▼夫婦で「親4人」を面倒みるうちに年老いていく

こんなふうに感じてしまう原因のひとつは、介護期間ではないか。

2015年7月、厚生労働省発表のデータをもとに現在のわが国における「介護期間」を算出すると平均10年だ。これは日本人の平均寿命(生存期間)から健康寿命(自立した生活ができる生存期間)を単純に引いたもので、厳密な介護期間とは言えないが、おおよその目安となるのではないか。介護期間は1~2年ならば、まだ頑張りがきくのだが、5年を超えると何の刑罰かと思ってしまいやすい。

当然のことだが、夫婦単位で見ると「親」は4人いることになる。5年、10年と、親たちの面倒を看ているうちにわが身も年老いていく。

そしてだ。