誰だって仕事に飽きている

「飽きっぽいというのは、かなり問題ですね」と言うのは、心理学者の諸富先生だ。

心理学者●諸富祥彦氏

「長期的に見れば、だらしなくて片付けられないということより、はるかに重大な性格上の欠点です。というのも、人間が幸福や成功を実現するためにいちばん大事な力は、無我夢中になれるかどうかなんです。これをポジティブ心理学で『エンゲージメント力』と言います。これがないのは大きなマイナスですから、直したほうがいい」

あまりにも飽きっぽい人は仕事が長続きせず転職を繰り返す。そうなるとキャリアが形成できず、非正規雇用を転々としたりすることにもなりかねない。もっとも、「そこまでひどくなければなんとかなる」と諸富先生は言う。

「誰だって大なり小なり仕事に飽きているんです。僕だって、同じことを繰り返していればうんざりする。でも飽きたら飽きたなりに、何とか続けていければそれでいい。それは人間の大事な能力です」

諸富先生は、今回のすべての悩みに対して、心理学の「リフレーミング」という考え方が使えると言う。

「リフレーミングとは、別の枠組みで本質を捉え直すということです。つまり角度を変えて眺めてみると、短所が長所に変わることはよくあります。だらしない人は別の言い方をすればおおらかだし、言いたいことが言えない人は相手の気持ちを尊重するやさしさがあるということ。細かいことが気になる人は、慎重だから大きな失敗をすることが少ないとも言える」(諸富先生)

飽きっぽい性格をリフレーミングしてみれば、「多様な好奇心を持っている」とも言えるだろう。

「せっかくいろいろなことに興味を持っているのだから、なんでもやってみればいいんです。興味の湧いたものを試しているうちに、夢中になれるものが見つかる可能性は高いと思いますよ」(同)