※本稿は、雑誌「プレジデント」(2016年10月3日号)の特集「毎日が楽しくなる脳内革命」を再編集したものです。
同僚へ「おはよう」と言っているか
「このあいだ立て替えた5000円、返して」という一言が言えない。「いつも私ばかりPTAの役員をやらされているけれど、たまにはほかの人に代わってもらいたい」と言いたいけれど、いざとなると言葉が出てこない。
こんな人は多いはずだ。世の中、言わなくても察してくれる人ばかりではない。黙っていれば異議なしと見なされ、今日も不満をためこむばかり。こんな自分を変えるにはどうすべきか。
「僕はわりと言いたいことを言うほうですが、日本社会ではこういう人間はどうしても風当たりが強くなる。自己主張が下手なのは必ずしも悪いことではないですよ」と言うのは生物学者の長谷川先生だ。
一方、「自分は内気だから言いたいことが言えないんだ、と思ったら大間違いですよ」と言うのは医学博士の加藤先生。
いざというとき言いたいことを言うには、「言いたいことを言っても関係が壊れない」と思えるだけの信頼関係が構築できていなければならない。加藤先生は嘆く。
「ほとんどの現代人は左脳ばかり使っているせいで、他人と面と向かってコミュニケーションするのが下手になっています。会社の同僚と毎朝ちゃんと目を合わせて『おはよう』と言っている人がどれだけいることか。そんな状態で、急に言いたいことが言えますか? 無理に決まっている」
いつ話しかけたらいいのか
言いたいことを言えるようになるには、段階を踏んで、やるべきことをやる必要があるのだ。
「たとえば相手に何か頼みごとをしたいとき。なるべく相手の機嫌がいいときや、忙しくなさそうなタイミングを見計らって声をかけるでしょう。しかし現代人は、他人が今どういう状態かを察するのがとても下手になっている。だからタイミングをつかめず気後れしてしまい、言いたいことが言えないのです」(加藤先生)
まずは右脳の視覚系脳番地を使って、相手が今どんな状態なのかをよく見ること。手始めに、相手がどんな服を着ていたか、何色のネクタイをしていたかなどに関心を持つようにしよう。「すてきなネックレスだね」「趣味のいいネクタイですね」とほめるのも効果的だ。さらにそれを記憶にとどめることで、微妙な変化に気付けるようになる。