こうして渋谷ウェルネスシティ・コンソーシアム(略称ウェルネコ)の創設に着手。とはいえ、平井にとってコンソーシアムは未知の世界。協力を仰げそうな人を探した。そのうちの1人が、企業に健康経営を広げる「健康経営アドバイザー」の研修を開いている東京商工会議所のサービス・交流部担当部長、藤田善三だ。
「平井さんとは健康経営に関するセミナーなどで何回かお会いし、『健康経営アドバイザーの研修を受けたい』とおっしゃるので、受講してもらいました」
その後、藤田は平井のアドバイザー役を務め、ウェルネコの理事にもなる。
藤田とともに健康経営アドバイザーのテキストを作成したのが大和総研のコンサルタント、枝廣龍人だ。大和証券グループ本社は、経産省と東京証券取引所が社員の健康への取り組みについて優れた企業に与える「健康経営銘柄」を取得していた。そんな健康経営の先進企業に16年1月、平井から「話を聞きたい」と打診があった。
「平井さんの『僕が考えている健康経営というのは病気を治すのではなく、アスリートのように、持っているポテンシャルを最大限に発揮できる、そういう健康をつくっていきたい』という理念にすごく共感しました」
枝廣は、経産省が進めている健康産業の創出にコンソーシアムが大きな役割を果たせると感じ、平井、坂本とともにその活動計画を練り上げた。
その頃、平井はミクシィ、サイバーエージェント、LINEといったIT企業や、東京急行電鉄(以下、東急電鉄)、KDDIといった歴史のある企業に声をかけ、渋谷の区長や医師会にも協力を依頼していた。
「最初は、知り合いもいなかったので、会社あてのinfo@メールに、『今、私は健康経営を進めていて、ぜひ一緒に渋谷からIT企業のイメージを変えていきたいので、みなさんの会社の社員も健康にしませんか』といったメッセージを送りました」
16年6月、渋谷の企業9社・2団体で渋谷ウェルネコを発足させ、経産省が助成する採択事業に選ばれる。
DeNA CHO室 室長代理/渋谷ウェルネスシティ・コンソーシアム理事長健康経営アドバイザー
2004年慶應義塾大学商学部卒業。OA業界の営業職、ゴルフのレッスンコーチを経て11年DeNA入社。人事部所属中の16年1月、CHO(Chief Health Officer)室を創設。