求められる実証的な政策議論

一方、増税使途見直しの効果は、財政収支の動向と切り離して評価することはできない。そこで続いては、プライマリーバランスの見通しについて、内閣府マクロモデルの乗数を基に、増税使途見直しに伴う経済動向の変動を通じて事後的にプライマリーバランスに及ぼす影響を試算した(資料5、6)。

まず、自民党案の前提をもとに得られた推計結果によれば、増税使途見直しに伴うプライマリーバランスへの影響は、借金返済に回る財源が半減することから、GDP比で見て2019年度▲0.16%ポイント、2020年度▲0.32%ポイント、2021年度▲0.32%ポイントのプライマリーバランス悪化要因となる。

民進党案では、借金返済分が全て社会保障の充実に回る。このため、プライマリーバランスへの影響はGDP比で見て2019年度▲0.31%ポイント、2020年度▲0.63%ポイント、2021年度▲0.64%ポイントとなり、プライマリーバランスを悪化させることになる。

希望の党案では、2019年度以降の3年間でそれぞれ▲0.21%ポイント、▲0.48%ポイント、▲0.52%ポイントのプライマリーバランス/GDP悪化要因となる。

すなわち、増税使途見直しはいずれも財政赤字の拡大要因となるが、増税分のほとんどを社会保障に回す民進党案よりも、増税を凍結する希望の党案のほうが財政収支の悪化度合いがやや少ないことになる。

以上見てきたとおり、増税使途見直しは再分配政策として検討に値する効果があるといえよう。各党の比較をまとめれば、自民党案が最も経済活性化効果は小さいが財政悪化の程度も最も小さい一方、民進党案が最も経済活性化効果が大きいが財政悪化の程度は最も大きいことになる。

しかし、希望の党案も消費増税が凍結される分、ほかで財源を捻出しないと本来予定されていた1兆円強の社会保障の充実が削られることになる。従って、わが国が深刻なデフレ均衡にさらされていることも勘案すれば、2014年4月の消費増税で得られた恒久財源8.2兆円のうち、借金返済に回っている3.4兆円分の使途を見直すことも検討に値するのではないか。

いずれにしても、増税の使途見直しが経済の各部門にさまざまな影響を及ぼすことを勘案すれば、増税の是非や使途見直しを国民に十分に納得させるには、実証的な政策議論が不可欠といえる。従って、各党は消費増税をめぐる議論において、定量的な影響分析についても議論し、そのうえで国民に審判を問うべきであろう。