「病院が近くにあると安心だと思いますよね。でも、病院って怖いところなんです。できれば近寄らないほうがいい。この数字を見てください」

福島県会津生まれの星旦二さんは、医師で医学博士で旧厚生省の官僚を務め、首都大学東京の教授を経ていまは同大名誉教授。都市の健康水準とその規定要因の研究を続けてきました。頑固一徹な気質で名高い“会津っぽ”の星さんが勢いよく示したのは、都道府県別の肝臓がん患者(男性)の死亡率グラフ。福岡県や大阪府など西日本で明らかに高く、東北各県や沖縄県は非常に低い。

「肝臓がんは飲酒が原因だと誤解している人が多いようですが、実際にはC型肝炎への感染が引き金です。感染の原因は要するに医療事故。人口当たりの病院数や医師の数は、早くから医学部が置かれ医療環境の整った西日本のほうが東日本よりも多く、『西高東低』などといわれます。ところがどうです。医師が多く病院が多いほうが医療事故も多いんですよ」

星さんによれば、寝たきり老人の数もそれを受け入れる施設数(特別養護老人ホームの定員)と比例して増えるという。病院や施設に頼らないほうが健康で長生きできる、というのが星さんの結論です。

「つまり人間、動かなくちゃダメなんです。病院や施設に頼っていては弱るだけ。1日6万歩歩くアフリカの部族には『腰痛』という言葉がないんです。そもそも腰痛ってなんなのか彼らは知らないわけ」

プレジデント2017年9月4日号(8月12日発売)の特集は「病気、介護、お金、片付け、空き家、お墓… 実家の大々問題」。お盆の時期くらい、年老いた親や実家のことを腰を据えて考えようという大特集です。医療、法律、介護、葬祭関係などの専門家が多数登場して最新事情をお伝えします。

プレジデント 2017年9月4日号発売中!特集は「実家の大々問題2017」です

その中の1テーマ「寝たきりにならず、『ピンピンコロリ』できる条件」を担当してもらったのが星さんです。ピンピンコロリ、すなわち健康長寿の条件については本文をお読みいただきたいのですが、会津っぽらしい情熱で私たちの"常識"を爽快に打ち砕いてくれました。

星さんだけではありません。今回の特集には、日本の現状に「このままではいけない」と警鐘を鳴らす方が多数登場します。従来の禁治産者制度に代わり2000年に始まった「成年後見人」制度の問題点を訴えているのは、老人学の研究者で一般社団法人「後見の杜」代表の宮内康二さん。

宮内さんは「成年後見人が一度決まったら解任はまずムリ。親御さんが『認知症かも』と思っても、家裁に申し立てるのはちょっと待ってください!」と危機感をあらわにします。なぜか?

そこには一口では語れない複雑な事情があります。詳しくは特集をお読みください!

【関連記事】
「長寿日本一」松川村の"幸せ老後"の秘密
相続の種類別トクする処理、大損する処理
老親に介護を頼まれた娘がキレる瞬間
なぜ片づけは、「親が亡くなってから」では手遅れなのか
「空き家」が危ない! 放置するとリスクが増大する理由