「男と女は違う生き物」「女は感情で生きている」――学生時代につるんだ友人がよく口にした言葉である。当時の筆者の周囲には女性関係の強者が何人かいて、飲みながら彼らのあけすけな話をきくたびに、筆者は「そういうもんか」と感心するばかりであった。
人は男女の非対称性に、人生のどこかの段階で気付かねばならない。男にとって、それはいつなのか。兄弟姉妹の軋轢から早くに察する者もいれば、多くの女性遍歴の中で悟る人もいるだろうが、多くは結婚して同じ屋根の下で過ごすうちに遭遇する、様々なサプライズから学んでいくものと思われる。
「悪妻は夫を哲学者にする」(ソクラテス)というが、「悪妻」はどこまでいっても夫の主観だ。それゆえ、いかなる良妻賢母にも「悪妻」となる瞬間は必ずある。夫は「なんでや」「理不尽だ」「ありえん」と怒り、混乱する。しかし、妻との諍いの中で、小さな諦めと悟りを積み重ねた夫の吐く言葉には、どこか自虐の入り混じった哀愁が漂い始める。夫は家庭内では常に敗者であり、それを受け容れることこそが夫の器である。妻が夫を見るモノサシは結局、器が大きいか、小さいかだけなのだ。そこに気付かぬまま妻を理屈で黙らせ、賢いオレの勝利だなどと悦に入るのは、後々人生のすべてを失いかねない。
プレジデント最新号の特集は「元気が出る哲学大全」。サブタイトル「悩まない生き方」「仕事も家庭も、人生も楽しくなる♪」がその効能書きとなっている。
特集中で筆者が担った企画は、その名も「愛と笑いの人生相談・家庭編」。「なぜ妻は私の話を聞かなくなったのか」「なぜ、小遣いは値上げされないのか」「なぜ、わが子は親が思う通りに育たないのか」「なぜ、妻は夫のすべてが気に入らないのか」……すべての夫が抱く苦悩・疑念の数々に対し、土屋賢二・お茶の水女子大学名誉教授、哲学塾カントを主宰する中島義道氏、作家の髙橋秀実氏という豪華メンバーから、哀愁漂う素晴らしいご回答を得ることができた。ぜひご一読を。