「男と女は違う生き物」「女は感情で生きている」――学生時代につるんだ友人がよく口にした言葉である。当時の筆者の周囲には女性関係の強者が何人かいて、飲みながら彼らのあけすけな話をきくたびに、筆者は「そういうもんか」と感心するばかりであった。
人は男女の非対称性に、人生のどこかの段階で気付かねばならない。男にとって、それはいつなのか。兄弟姉妹の軋轢から早くに察する者もいれば、多くの女性遍歴の中で悟る人もいるだろうが、多くは結婚して同じ屋根の下で過ごすうちに遭遇する、様々なサプライズから学んでいくものと思われる。
「悪妻は夫を哲学者にする」(ソクラテス)というが、「悪妻」はどこまでいっても夫の主観だ。それゆえ、いかなる良妻賢母にも「悪妻」となる瞬間は必ずある。夫は「なんでや」「理不尽だ」「ありえん」と怒り、混乱する。しかし、妻との諍いの中で、小さな諦めと悟りを積み重ねた夫の吐く言葉には、どこか自虐の入り混じった哀愁が漂い始める。夫は家庭内では常に敗者であり、それを受け容れることこそが夫の器である。妻が夫を見るモノサシは結局、器が大きいか、小さいかだけなのだ。そこに気付かぬまま妻を理屈で黙らせ、賢いオレの勝利だなどと悦に入るのは、後々人生のすべてを失いかねない。
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