「空き家」であふれかえる日本

空き家が社会問題化して久しい。フジ総合グループが昨年12月、相続に関心のある、50代から80代までの男女220人に行ったアンケートによれば、「現在、空き家を持っている、もしくはこれから持つ予定はあるか」との問いに対し、32%の人が「持っている(持つ予定がある)」と回答。さらに、「空き家を持っている(持つ予定がある)」と答えた人に、「今後の空き家の利用方法」を聞いたところ、「売却」「賃貸」と答えた人が半数以上に上り、問題解決に意欲的な層がいる一方、「そのまま」と回答した人も22%いた。回答から、マスコミで騒がれている空き家問題が「人ごと」ではなく、私たちに身近な問題であることがよくわかる。

また、総務省統計局が5年に1度、行っている「住宅・土地統計調査」のうち、直近の2013年の調査では、空き家の数は820万戸と過去最多。全国の住宅の13.5%を占めるまでになった。

加えて、国土交通省住宅局が戸建て空き家の所有者、管理者、土地所有者を対象に、2014年に行った「空家実態調査」によると、「空き家に最後に住んでいた人」は「現在の所有者の親」が最多(33.4%)。また「人が住まなくなった理由」の第1位は「死亡した」(35.2%)、さらに「所有者の住んでいる住宅」は「戸建の持ち家」が圧倒的に多く(70.6%)、「住宅を取得した経緯」は「相続した」がトップ(52.3%)であることから、空き家の多くが、実家と別に居を構えた子どもが、親の他界を機に実家を相続し、そのまま放置していることに起因することをうかがわせる。

空き家の放置は税制が拍車をかけているとする意見も根強い。市町村が課す固定資産税は、土地が更地の場合、課税標準の1.4%が税額となるが、居住用建物が建っていると、「小規模住宅用地」として住宅1戸につき200平方メートルの部分まで課税標準が6分の1、「一般住宅用地」として200平方メートルを超える部分につき課税標準が3分の1に減免される。更地にしておくより、居住用建物を残しておく方が税金が安くなってしまうのだ。

管理が行き届いていない空き家は、周囲の景観を損ねるだけでなく、倒壊して道路をふさいだり、火災の原因になったりとその社会的影響は計り知れない。しかしながら、こうした空き家であっても、個人の所有物であるために、許可なく敷地内に立ち入ることは不法侵入に当たる。このことから、行政が十分な手を施せない状況が続いた。こうした中、政府もようやく対策に乗り出した。