あなたの身にも忍び寄る相続税の影

2014年の全国消費実態調査、15年の国勢調査をもとにした計算によれば、30歳から39歳が世帯主である世帯の資産額の合計は77兆円なのに対し、60歳から69歳が世帯主であるそれは463兆円、70歳以上が世帯主であるそれは571兆円と、高齢世帯の資産保有額が群を抜いている。とくに世帯主が70歳以上の1世帯当たりの資産構成は、預貯金、有価証券等の金融資産が40%なのに対し、宅地、住宅等の実物資産が60%と、不動産の割合が大きい。

また、厚生労働省の調査によると、15年の日本人の男性の平均寿命は80.8歳、女性のそれは87.1歳。超高齢社会の日本で最も大きな割合を占めており、保有資産の多い彼らが亡くなり始める中で、大規模な資産の世代間移転が、今、日本で起きている。それが「相続」である。

こうした流れの中、15年には「相続税」が増税された。相続がどの家庭でも起こりうる身近なできごとにこれまで以上になっているもかかわらず、人々はあまりに無防備で、何も知らないのかもしれない。

フジ総合グループでは、相続専門の税理士、相続不動産に強い不動産鑑定士がタッグを組み、1992年の設立以来、3600件以上の相続税案件を手がけてきた。これから、私たちが実務に携わる中で知りえた「相続税」にまつわる問題点を、お伝えしていきたい。

15年1月より相続税が増税となった。これまで基礎控除が「5000万円+1000万円×法定相続人の数」だったのが、改正後は「3000万円+600万円×法定相続人の数」と大幅に引き下げられた。たとえば、家族が妻と子供2人の場合、基礎控除額は4800万円。地価の高い三大都市圏に家を所有していて、多少の貯金があれば、それだけでこの基礎控除を超えてしまうことになる。

今回の増税によって、15年に課税対象となった被相続人数は前年の約5万6000人から約10万3000人に増え、それにともなって死亡者数に対する相続税の課税割合は、4.4%から8.0%に増加した(16年12月国税庁発表資料)。

しかしながら、全体でみれば10%以下で、ほとんどの人にご縁がないのが相続税ともいえる。万が一、納税が必要となった場合、人生に一度か二度しか経験しないものだけに、まわりに相談できる人も限られる。そうしたことから、相続税は、俗に「孤独な税金」といわれる。