新入社員定着の秘訣「組織の風通し」

「月次成果管理といって、品質、コスト、時間のいわゆる『QCT』の観点から、自らの仕事振りを1カ月ごとに行うチェックに、全社員で取り組んでいます。その際に意識しているのが、饗庭達也社長がよくいう『理想の姿-現状の姿=課題』ということです。そして、明らかになった課題に対して、速やかに手を打っていきます」

こう語るのは、化学品、情報システム、住宅設備など幅広い分野に展開する総合商社の三谷産業で人事を担当する常務の三谷忠照さんだ。「1カ月ごとのチェック」といい、「理想の姿」といい、これらは先に見てきたリチーミングの手法と共通しているではないか。

それもそのはずで、同社は2009年に人事部で初めてリチーミングの研修を受けているのだ。その後はグループ会社でのリチーミングの展開を行い、「国内における研修は一巡したところです」と三谷さんは話す。

(左)三谷産業では問題点の指摘を改善に向けた提案として前向きに捉えていると話す三谷忠照常務。(右)一騎当千の社員が増え1人当たりの売上高もアップ※単体ベース

確かにリチーミングによる無形効果は数字で表すことが難しいのだが、効果は徐々に表れてきている。三谷さんは「月次成果管理でもそうですが、問題点を明らかにすることに抵抗感がありません。それも『誰が悪いから』ということではなく、改善に向けた提案として前向きに捉えています」という。

そうした風通しのいい組織だからなのだろう。「大卒新入社員の3割が3年以内に辞める」といわれるなかにあって、同社は毎年35人前後を採用しているが、辞めていくのは2人いるかいないか。一騎当千の社員が増え、単体ベースで見た1人当たりの売上高もアップしている。