李承晩大統領は大田(テジョン 韓国中部の都市)に逃げ、そこまで北朝鮮軍が迫るとさらに大田を捨て、大邱(テグ 韓国南部の都市)に逃げます。さらに、大邱にも北朝鮮軍が迫ると、釜山に逃げました。李承晩は7月2日に釜山に到着しています。

韓国軍は漢江大橋爆破以後、士気を大きく低下させて、指揮系統を失い、北朝鮮の進撃にまともに抗戦することもできませんでした。

しかし、ようやく開戦から1週間たった7月2日以降、アメリカ軍が本格的に部隊を送り込みます。李承晩ら政府の首脳部が当てにしていたアメリカの軍事介入はアメリカ本国との連絡調整、準備などに手間取り、遅れていました。アメリカのトルーマン大統領は朝鮮半島への介入に、慎重かつ消極的でした。この間、釜山が陥落していたとしても不思議ではない状態でした。

アメリカ帰りの李承晩は口を開けば、「アメリカ、アメリカ」でした。その彼のメンツも大いにつぶれたのです。過度な同盟依存はろくな結果とならない。歴史が教える教訓です。

宇山卓栄(うやま・たくえい)
1975年、大阪生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。個人投資家として新興国の株式・債券に投資し、「自分の目で見て歩く」をモットーに世界各国を旅する。おもな著書に、『世界一おもしろい世界史の授業』(KADOKAWA)、『経済を読み解くための宗教史』(KADOKAWA)、『世界史は99%、経済でつくられる』(育鵬社)、『“しくじり”から学ぶ世界史』 (三笠書房) などがある。
(写真=AFP=時事)
【関連記事】
なぜ「現時点での米朝戦争はない」と断言できるのか
橋下徹"北朝鮮ミサイル攻撃甘受できるか"
中国、ロシアが北朝鮮を本気で制裁しない理由
泥沼「中東情勢」テロと国家の戦いは続く
怪物・ISは誰がつくり、育てたのか