再生医療はもう夢の話ではない

【田原】サンバイオが臨床試験を進めている脳梗塞の薬が「SB623」ですね。いつから試験をしていますか。

【森】SB623は開発のコード名で、11年からアメリカで臨床試験を始めました。14年に結果を論文にまとめたら話題になって、CBSニュースで特集を組まれました。

【田原】順調そうですね。実際に発売できるのはいつごろでしょう?

【森】再生医療は夢の話だと考えている方は多いですが、製品化に向けて現実的なところまできています。私たちは大日本住友製薬と帝人の2社と提携しました。製品化されたら彼らが販売をしてくれます。具体的なスケジュールは差支えあるのでお話しできませんが、そういった話が進んでいるくらいに現実感があると考えてください。

【田原】まだしばらく売り上げはないですね。資金は大丈夫ですか。

【森】大手企業との提携という形で売上があります。また、15年にマザーズに上場して約70億円の資金調達ができました。資金的には安定していて、恵まれた環境にいます。

【田原】脳梗塞の薬が完成したら、次は何ですか。

【森】交通事故などで起こる外傷性脳損傷については、すでに日本で臨床試験を始めています。それからパーキンソン病や脊髄損傷、認知症、アルツハイマーなど、脳や神経の病気を積極的にやっていきます。さらに脳にかぎらず、ほかの器官でも再生医療を広げて、その分野のリーダーになりたいです。

【田原】いまは日本とアメリカでやってらっしゃいますが、将来はほかの地域でも製品化しますか。

【森】ヨーロッパや中国、アジアは考えています。脳梗塞だけで世界で何千万人という患者さんがいて、認知症になるとさらに桁が一つ増えます。脳や神経の病気で苦しむ人が一人でも多くよくなるように頑張っていきます。

森さんから田原さんへの質問

Q. 日本がグローバルで勝つためには何が必要ですか。

いま注目の人工知能で勝ちそうな企業はどこでしょうか。Google、Apple、Amazon……。聞こえてくるのはアメリカ企業ばかりで、日本企業の名前はまずあがりませんね。

日本が人工知能で後れを取っているのは、基礎研究が弱いからです。実際、大学のランキングは悲惨です。イギリスの教育専門誌の2016-2017年ランキングで、東大39位、京大91位。200位以内に入ったのは、わずか2校だけです。これでは最先端分野で戦えません。

世界で勝ちたければ、大学から改革しないダメでしょう。幸い、再生医療のように基礎研究がしっかり行われている分野なら日本も勝てる可能性があります。森さんには、そのことを証明してもらいたいですね。

田原総一朗の遺言:基礎研究に力を入れろ!

編集部より:
次回「田原総一朗・次代への遺言」は、
和える 代表取締役・矢島里佳氏のインタビューを掲載します。一足先に読みたい方は、3月27日発売の『PRESIDENT4.17号』をごらんください。PRESIDENTは全国の書店、コンビニなどで購入できます。
 
(村上 敬=構成 宇佐美雅浩=撮影)
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