欧米に留学するよりも安価、日本からも近いし効果アリ、と最近日本のビジネスマンに人気なのがフィリピン英語留学。そのメッカともいえるのがフィリピン・セブ島だ。セブ島に本部を置き、Skypeを使ったオンライン英語学習プログラムとフィリピン留学(オフライン)の両方のサービスを展開するのが「QQイングリッシュ」(http://www.qqeng.com/)。イギリスで開発された英語学習法「カランメソッド」の正式認定校でもある(http://president.jp/articles/-/19282)。

社長の藤岡頼光氏は高卒でバイク便を始め、40歳から英語を本格的に勉強。その数年後に語学学校を開設し、手探りで学校経営に取り組んだ。今は400兆円とも言われる世界の教育市場をインターネットの力で変えたい、と話す。“バイク屋のおやじ”はなぜ中年から英語事業に取り組むのか。中高年から英語を覚えるコツとは? 藤岡氏と田原総一朗氏の対談、完全版を掲載します。

バイク便「キュウ急便」とバイクの輸入販売

【田原】藤岡さんはフィリピンのセブ島で英語学校を運営されています。そもそもどうして英語に興味を?

【藤岡】もともと英語はまったく話せなかったんです。高校卒業後、浪人しているときに父が亡くなって進学を断念。自分でお金を貯めてアメリカで一旗揚げようと考え、ウィスコンシン大学のミルウォーキー校に留学するために現地のESL(語学学校)に入学しました。ESLはTOEFL500点あれば授業を受けさせてくれたので。でも、授業にはまったくついていけませんでした。100ページの本を読んでレポートを10枚書けといったような課題が毎日出て、もうこれは死んじゃうぞと。結局、英語が何も話せないままギブアップして帰国してしまいました。

【田原】帰国後はバイク便の会社をつくりますね。どこかにお勤めにならなかったんですか。

【藤岡】海外に興味があって、貿易の事業をやりたいと考えていました。かといって、手元に開業資金はありません。いまならインターネットで起業するのかもしれませんが、当時はインターネット登場前。お金をかけずにできることはないかと考えて、最初は個人事業主のバイク便ライダーから始めました。いずれにしてもサラリーマンになるつもりはまったくなくて、喉が渇いたら水を飲むように勝手に体が動いて起業しました。

【田原】バイク急便の会社をつくったのはどれくらい前ですか。

【藤岡】「キュウ急便」というバイク便で、会社は25年前です。業界の中では先行ではなく、5年ぐらい遅れていたと思います。それでも事業としては順調にいって、ピークで約100人、景気が悪くなった後も70~80人の従業員がいました。

【田原】仕事で英語は使わなかったんですか。

【藤岡】バイク便のおやじですから。

イタリア語の難しさに比べたら、英語はマシ

【田原】でも、もう一回、英語を勉強し直したそうですね。それはどうして?

【藤岡】バイク便だけでなくバイクの輸入販売も手がけていました。仕入れの仕事でイタリアに行ったとき、とても素敵なスクーターに出合いました。イタリアで90年続く老舗メーカーのスクーターです。これをつくっている人と話をしてみたくなり、いきなりオーナーに会いにいきました。ホンダやヤマハの国からバイク屋がきたということで、オーナーはすごく喜んでくれましたよ。でも、私は英語を話せなかったので、あまり話ができなかった。それでやっぱり語学は必要だなと。

【田原】通訳は連れていかなかった?

【藤岡】オーナーとしたかったのは、仕事ではなくて趣味の話。好きな趣味の話をするときに、通訳を入れるのはどうしてもいやでした。

【田原】相手はイタリア人です。なぜイタリア語じゃなくて英語?

【藤岡】じつは最初は、フィレンツェにあるイタリア語学校に通ったんです。でも、1日で音をあげました。イタリア語はおかしいですよ。英語の動詞は3段活用ですが、イタリア語は7段です。過去形も遠過去、近過去で分かれていたり、主語が男性か女性かによっても変わります。これはとても覚えられません(笑)。

【田原】それで英語のほうがマシだと。

【藤岡】おっしゃるとおりです。私はいままで英語が苦手だと思っていました。でも、イタリア語に比べたら、すでにずっと知っているんですね。たとえばイタリア語ではゼーロ、ウーノくらいしかわからなくても、英語なら少なくても1から10まで数えられます。目的はオーナーと交流することで、オーナーは英語が話せます。それなら英語を勉強し直したほうが楽だし早いと考え、再チャレンジしました。