岩手医科大学教授 杉山 徹氏

私の肺がんが見つかったのは、2010年5月のことでした。毎年行われる職場の定期検診で胸部レントゲン写真に影が出て精密検査をしたところ、4センチメートル大のがんだとわかったのです。予想外の出来事でした。というのも、肺がんが気づかないうちに、ここまで大きくなるとは思わなかったからです。

振り返ってみると、自覚症状もありました。その年は春先から咳が止まらなかったのです。でも、私には花粉症の持病があり、これまでのPET/CT検査でも異常がなかったので、「今年は花粉が多いのかな」と気にしませんでした。しかし、いまさら過ちを責めたところで何もプラスにはなりません。前を向いてがんの治療に取り組むことにしました。

肺がんは、がん細胞の種類によって、小細胞がんと非小細胞がんに大別されます。小細胞がんは、増殖のスピードがきわめて速く、転移しやすいので、肺がんのなかで最も治りにくいがんです。非小細胞がんは、小細胞がん以外の肺がんの総称で、腺がん、扁平上皮がん、大細胞がんなどがあります。この非小細胞がんのうち、喫煙との関連が少ない腺がんが過半を占めます。

小細胞がんは、手術できないケースが多く、化学療法や放射線療法が中心になります。一方、非小細胞がんは進行度によって治療法が変わります。非小細胞がんの進行度を示す病期(ステージ)は、がんの大きさや位置、それに肺のほかの部位、まわりのリンパ節、ほかの臓器への転移の有無によって、低い順に1~4期に大きく分けられます。目安としては、リンパ節転移がないか、あるいは近くへの転移にとどまっているのが1~2期、転移が広範囲に及んでいるのが3~4期といえるでしょう。

1~2期(3期の一部も含む)では、手術が第1選択になりますが、3~4期では、基本的にインオペ(手術不能)で化学療法がメーンになります。ただし、1~2期でも大半が手術と化学療法を併用することになります。さらに放射線療法を加えることもあるのですが、その化学療法では単独、あるいは複数の抗がん剤を使います。