イノベーションは国力そのもの

地中海に面した開港、イスラエルのハイファ。イラクやレバノンに続く鉄道が敷設され、イラクで生産された原油はパイプラインを通ってハイファ港に送られ、ここから各地に輸出される中東貿易の要衝だ。

ここにはイスラエル最古の国立技術大学がある。設立されたのは今から100年以上前の1912年。アインシュタインが中心となって技術研究を行い、ナチスのヨーロッパ、旧ソ連から逃れてきた10万人ともいわれる科学者や技術者の英知が結集されたのがテクニオン・イスラエル工科大学だ。

そのレベルはマサチューセッツ工科大学と肩を並べる世界最高峰で、18の学部と教育機関を擁し、ノーベル賞受賞者2人も教鞭をとっているという。

「イノベーションは国力そのもの。最近の日本はイノベーションの力が衰退している。それを打ち破るのが安倍内閣の3本の矢。それは打たれずに終わってしまった。一方で急成長を遂げる中国がイスラエルとシリコンバレーに触手を伸ばし、イノベーションを取り込もうとしている。日本も後れをとってはいけない」

千代田国際経営法律事務所の弁護士でテクニオン・ジャパンのCEOを務める石角莞爾氏はこう警鐘を鳴らす。

「テクニオン・ジャパン株式会社」公式サイトより

テクニオン大学はマイクロソフトやグーグル、アップル、フェイスブックといった世界の名だたるIT企業が人材を囲い込むほど優秀な人材が集まっており、卒業生のほとんどが自ら事業を立ち上げるベンチャー企業の養成所だ。テクニオン大学の卒業生によってこれまでに1602社、教授、助教授の技術をベースに設立された会社が134社、すでに米ナスダックには70社が上場している。

「学生だけでなく多くの教職員もベンチャー企業を経営しています。学生は入学すると、研究開発だけでなく、研究成果をどう事業化すればいいのか、シリコンバレーではどう資金調達すればいいのか学ぶことができます。少なくとも1回は起業したことのあるテクニオンの卒業生は68.4%にも及びます」(石角弁護士)