権限と財源を移譲しないと地方分権ではない
【塩田】維新の会は大阪でカジノをつくるために法案成立を目指して頑張ったのですか。
【松井】IR法案だけではありません。ポイントは地方分権です。地方分権推進一括法が2000年に成立して17年が過ぎましたが、遅々として進まない。地方が霞が関と永田町で力を持たないからです。IR法案だけでなく、国が握る権限と財源を移譲しなければ、地方分権といえない。やろうと思うなら、地方の側が自分たちの勢力をつくっていくしかない。僕は今、地方分権のために、あるべき姿の政治をやっていると思っています。
【塩田】小池百合子東京都知事が誕生して半年が経ちました。今も破竹の勢いで、東京都政だけでなく、中央政治にも影響を与え、「小池旋風」が注目を集めています。
【松井】頑張ってもらいたいと思います。ですが、唱えている「東京大改革」は、何をやろうとしているのかとわからない。今、やっていることは、僕から見ると、大阪では4~5年前にすでにやってきたことです。東京都の意思決定をフルオープンにすると言っていますが、大阪では6年前から予算編成過程もフルオープンで、大阪府の戦略本部会議は、庁内放送で流れていますし、記者も入ってやっています。
「教育の無償化」も大阪では6年前から私立高校等の授業料(590万円未満世帯)については完全無償です。小池さんの場合、高校の完全無償化となるのかどうかは、ちょっとわかりません。完全無償を実現する場合、私立学校の授業料の上限設定、つまりキャップをはめなければならない。私立学校への助成金の額を上げるだけなら、各学校が授業料を値上げすれば、学校が儲かるだけの話になります。本当に完全無償を実現するには、学校や私学団体と徹底的に議論して、説明し、納得してもらってキャップをはめなければなりませんが、すさまじい抵抗があります。教育の機会平等で、誰でも自由に高校が選択できるようにするなら、キャップをはめることができるかどうかが重要で、これが改革だと思います。大阪府は橋下知事時代でしたが、私学団体と激論になりました。大阪府は説明し切って、私学側に合意してもらったから、実質無償化ができたんです。小池さんはそこがやれるかどうか、僕が注目しているところですね。
もう一点、知事だけで役所は動きません。決定権は議会にありますが、議会の構成が選挙目当ての野合談合だと、選挙が終わればバラバラになってしまう。その人選ができるかどうかです。はっきり言って、「小池新党」に集まってくる人たち一人一人の覚悟、信念がちょっと見えない。今回、小池さんが言い出した豊洲移転問題も、今の議員は全員、移転賛成だった。それを覆すことについて、理屈がわからない。築地よりも安全性が確保されるなら、移転すべきだと議会は言うべきです。それを言わずにすべて小池さんに寄りかかっていくのは、政治家が議員バッジを付けたいだけとしか僕には見えないですね。
ですが、知事として小池さんに頑張ってもらって、霞が関が握る権限や財源をどう地方に移すか、そこで協力してやっていきたい。東京と大阪と、あと一つ中部とか、多極分散でエリアをつくっていく。それが日本中に改革が広がるきっかけになると思っています。