ビジネスマンの心と財布をつかみ絶好調のアパホテル。施設数は400以上、アパカード会員数は1252万人。駅徒歩平均3分以内の立地を武器に「都心の稼働率はほぼ100%」と豪語する元谷芙美子社長の金銭感覚とは。

お金のプロが買う物、それはタイミング

昨年度の年収は5億5000万円でした。でも、金銭感覚は高校を卒業して、信用金庫で働いていたときと全く変わっていません。初任給1万7800円ほどをいただいた頃のままです。夫であるアパグループ代表の元谷外志雄は「おいしいおみおつけとご飯があれば大丈夫」と言う人ですし、子供も厳しく教育してきました。

アパホテル社長 元谷芙美子氏

会社はこれまで1人のリストラもせず、1度の赤字もありません。今までに払った税金は1200億円以上。できる節税をしたうえで収益を上げて1円でも多くの税を納めることを心掛けてきました。雇用をつくり出し、需要を創造し、納税の義務を果たす──これらを同時に継続するのが、オーナーとしての社会貢献だと思います。

私にとっては、会社として事業をさせていただくことが一番の資産運用なのです。上場もしていませんし、私と夫と息子2人の4人で全株オーナーですから、投資信託などで運用する必要もありません。会社がそのまま“アパファンド”なのです。

今期は売上高1105億円、経常利益が338億円。経常利益率は30%強あります。ホテル業界では世界一と言える収益力です。通常のホテルはオーナーと運営会社とブランドが異なるため、利益率は5~10%くらい。しかし、私たちはほとんどの施設を保有し、自前のブランドで運営していますから、高い収益力を得られるのです。

ビジネスで大事なことは、スピード、笑顔、誠実信用、そして安全性です。でも、今のようにホテルチェーン全体で6万室を超えるような規模になると、万に一つのことが毎日6つあってもおかしくありません。気の抜けない命懸けの仕事に日々緊張しますが、楽しく、生きているという実感があります。休みはありません。仕事が遊びで、遊びが仕事。境界なんていらないのです。

異常とも言える超低金利時代を迎えていますが、実は今が投資のチャンスです。大底は脱したものの、まさにこれから上がろうとしています。不動産はタイミング。素人の方は結婚や退職時など必要なときに買いますが、それでは遅い。プロは要る、要らないで判断せず、タイミングを買うのです。

その理由は、経済がサイクルで動いているからです。バブルだろうと、リーマンショックだろうと、上がれば下がるし、下がれば上がる。景気が変動する中で、どこで買うか、誰から買うかが大事です。