Q. 目上の人から信頼され、引き立てられるにはどうするか

目上の人から信頼され、引き立てられるために、小倉氏が開口一番アドバイスしてくれたのは、「堂々と太鼓持ちをすること」。上司をきちんと立て、機嫌よくなるように振る舞うことだ。なかには、「自分の上役は持ち上げたくなるような器じゃない、実力では俺のほうが上だ」と思う人もいるかもしれない。だが小倉氏は、国民教育の父と呼ばれた昭和の哲学者・森信三氏の言葉を引いて、こう指摘する。たとえ「上司が自分より人間的に劣るからといって軽蔑するのは、社会に対する反逆である」。

上司の人間性が優れているか否かは関係ない。上司という人物ではなく、その地位を敬うと考えるべきなのだ。実際、すべての上司が有能で優れた人物とは限らない。学歴や年齢、タイミング次第で、実力以上のポジションについてしまうケースもある。

だが、頼りないからといって上司をバカにするような態度を取っていると、会社組織の秩序を守れない者だと見なされる。そんな人間に組織を委ねることができないのは明らかだ。世の中の秩序やルールを守れない者は、到底役員レベルに出世などできない。

もちろん、むやみに媚びへつらって寵愛を得よ、という意味ではない。単なるおべんちゃらや、歯が浮くような台詞でゴマをすっても上司に見透かされるだけだ。小倉氏いわく「上司とてバカではない。太鼓持ちをされて気分がいいから部下を評価するのではなく、他人を立てられる利他的な人間かどうかを見ているのだ」。

上司と良好なコミュニケーションを取れる人間は、その様子を見ている周りの人間からも評価されるもの。田島氏はマイクロソフト時代、上に引き立てられる人間は「常に自分は見られていることを適切に意識できている人間」だったという。「実力を発揮して出世していく人は、みんな機嫌よく仕事をする人。いわばいいオーラを出している」。機嫌よく仕事に打ち込める部下なら、上司も引き立てたくなるのは当然だ。いいオーラは「この人のためならひと肌脱ごう」と周りからの信望も集めるため、自ずとリーダー的なポジションに引き上げられる。