止まらぬ損失!WH買収でハマった落とし穴
しかし年末になって急浮上してきたのが米国の原発子会社ウエスチングハウス(WH)が買収した「CB&Iストーン・アンド・ウェブスター(S&W)」ののれん代と含み損失だった。
東芝が粉飾決算の事後処理に忙殺されていた2015年10月、WHがCB&Iの建設子会社「CB&Iスティーブ・ウェブスター(S&W)」を買収することで合意したと発表した。
ジョージア州とサウスカロライナ州で2基ずつ計4基の原発を建設していたが、この工事がついてくるという代物だ。原発一基が一般には5000億円といわれるから総工費で2兆円の工事が入ってくる。実はS&Wは債務超過で多くの訴訟を抱えていたことから工事に集中することができず、負債も含めてすべて引き受ける形でWHが引き受けた。現金の支払いはなかったという。
ところが2016年1月に買収が完了し、WHが乗り込んでみるととんでもない事実が発覚した。15年12月31日の時点で、11億7400万ドル(約1326億円)の想定運転資本額があるはずだったが、WHの算出値は9億7770万ドル(約1173億円)のマイナスだった。
差異は21億5100万ドル(約2581億円)。売却先と差異が生じた場合は第三者の会計士を選任することになっていたが、相手側は逆に選任差し止めで提訴。
さらにジョージア州とサウスカロライナ州の原発工事でも、今後提携して工事を進めていくことになったフルアーが見積もりを取り直すと、数千億円の損失があることが発覚。東芝は2016年12月、あわててこれを発表した。
損失額は最大で7000億円になるといわれている。東芝の資本金は3600億円、経常利益の見通しは1300億円、損失が5000億円を超えれば債務超過になる。このような中で今後は虎の子の半導体事業を分社化。今後は株式を売却して外部から資金調達を図ることになるかもしれない。
主力事業を次々に売却し、3本足打法のはずが重電とインフラ事業ぐらいしか残っていない東芝。しかし重電の花形、原発はいまだにほとんどが稼働できずにおり、国内では新しい原発の建設は難しいといわれている。綱川社長もまた今後は新規では原発の建設工事からも撤退する可能性を示唆している。
タコが足をくうように自分の事業を次々に売却してきた東芝。メインバンクは支援を表明しているが、今後こうした状況で再建はできるのか。2月14日の2016年度第3四半期の決算発表で全貌が明らかにされる。