日産の電気自動車が販売首位に
つまり、トヨタはマツダのスカイアクティブ技術が持っている優位性に類似の発想で真っ向から挑み、数字に限ったことではあるものの、成功したことになる。言い換えれば、現時点で少なくとも、スカイアクティブのガソリンエンジンに関しては、このトヨタの新エンジンによってマツダの独自性は消費者にとって希薄にならざるを得ない。しかもトヨタにはハイブリッド技術という独自の財産がある。ガソリンで攻め、ハイブリッド技術で攻める。こうなるとトヨタは強い。
日産の動きも気になる。同社は電気自動車の投入によって環境性能の優位性を主張し続けている。その象徴が、昨年11月2日に発売した電気自動車、ノートe-POWERだ。なんと177万円から始まるという低価格。マツダにとっては、デミオの強力なライバルになる。経済的な環境性能車を求める小型コンパクト志向の消費者はこれに敏感に反応した。発売した11月にいきなり1万5784台を販売、軽自動車を含めた国内販売の全銘柄ランキングで首位に躍り出たのだ。
消費者は、内燃機関だけでなく多種多様なパワープラントに関心を持ち、その選択肢を広げているという現実がそこには存在し、市場は動いているのだと改めて思い知らされる。
こうした競争環境を考えると、マツダにとって頼みの武器となるのは、当面、ディーゼルエンジンということになるだろう。CX-5の場合、発売時から今年10月までの約5年間で累計の国内販売は14万9055台を記録。そのうちディーゼル仕様車は11万5299台で、構成比は77パーセント。“CX-5と言えばディーゼル車”というほどの高い比率になっている。また、国内のディーゼル乗用車市場全体で見ても、昨年2015年の国内総販売台数は15万3732台に対してマツダ車は10万3804台で、そのシェア67パーセントとなる。つまり国内では、マツダがディーゼル乗用車の圧倒的トップメーカーなのだ。トヨタをはじめとする他社がスカイアクティブと類似の発想でディーゼルエンジンを開発し市場に投入したとしても、この4年間あまりにわたって市場に定着した“ディーゼルに強いマツダ”、という評価は簡単に崩れないだろう。
したがって、新型のCX-5が成功するかどうかは、ここまで築き上げてきた“ディーゼルに強いマツダ”という市場の評価をさらに高められるかどうかに大きくかかっている。すでに述べたように、新型には「すべてを一新した」という登場感はない。しかも市場環境を見てみると、内燃機関以外の動力源の高性能化多様化もさらに進行しているのだから、競争環境は初代のときより一層厳しくなってきている。したがってディーゼルエンジンに対する消費者の受け止め方も、動力源の選択肢が多種多様になるにしたがって変化していくだろう。