DeNAのキュレーションサイトは、何が問題だったのか

今回、DeNAのキュレーションサイトが問題になった理由は、大きく分けて2つある。

1つは、WELQにおいて、医療の専門知識を持たないライターが書いた医療系の記事を掲載していながら、その内容についての正確性を担保せず、不正確な内容の情報を公開していたということだ。薬機法(旧薬事法)違反の記事も多くあり、11月28日には東京都の福祉保健局にDeNAの担当者が呼び出され、指導を受けるという事態にもなっていた。これについて守安社長は「当初、WELQは筋トレなど、ライトなヘルスケア情報のサイトということで昨年(2015年)8月にスタートした。外部から『WELQの医療情報(の信憑性)はどうなの』と言われるようになったのが、今年の夏ごろの話。医療情報に関しては、公開された記事をあとから監修していけばいいと考えていた。世間の認識とズレていた、甘かったと反省している」とコメントしている。

もう1つはMERYやiemo、Find Travelなど、同社のキュレーションサイト全てに関わる、記事の制作プロセスである。一般のメディアサイトであれば、編集部があり、外部スタッフ(ライターや編集協力、カメラマンなど)と協力しながら、取材などを元にオリジナルの記事を制作していくのが常だ。しかしDeNAのキュレーションサイトではオリジナルの記事を書く代わりに、外部のサイトに書いてあることを無断でコピー&ペーストし、文末を少し書き換えてまったく同じ文章にならないようにすることで“オリジナル”な記事に仕立てる、という作り方をし、制作コストを極端に低く押さえていた。これは他サイトに掲載されていたコピー元の記事を書いた人たちの著作権侵害に当たるのではないかという指摘だ。

DeNAのキュレーションメディアにおける記事作成プロセス

会見では、同社のキュレーションサイトの記事作成プロセスについて説明が行われた(画像)。DeNA社内のプロデューサーが社内外のディレクターに指示を出し、ディレクターはライターに直接、あるいは外部パートナー(クラウドソーシングサイトなどを指す)を通じてライターに原稿執筆を発注する。このほか、ライターが直接記事を投稿できるケースもあり、どうやって投稿された記事なのかは外からは分かりにくくなっていたという。

筆者が気になったのは「編集部(に相当するもの)がなかった」という点だ。メディアにおいて、記事の品質や内容の正確性を担保するためには編集部が必要だが、それがなかったと、小林氏は説明している。

また、「プロデューサー、ディレクターから、外部パートナーまたはライターに記事作成を発注する際において、他の方が作成された記事などを参考にする場合には、元の記事と同一の形にならないように作成するよう指導していたマニュアルがあった」とも小林氏は明言している。他の人が書いた記事を(適切な手順を踏んで)書き写すのであれば「引用」だが、元記事があることを知っていながらわざわざ書き換えていたならば、それは「盗用」である。

経緯説明と記事作成プロセスの説明のほか、取締役会で出た指摘を受けて、第三者による調査委員会を設置し、事実関係の調査を行っていくという。また今後の対策として相談窓口を開設すると発表。同社のサイトの情報によって健康被害を受けた人、また記事の正当性に懸念がある人は窓口から連絡が欲しいと話した。

守安氏、小林氏の説明のあとは質疑応答が行われ、会見は3時間にも及んだ。以下、筆者が特に気になった4点に絞って質疑応答の内容を紹介する。