3月20日は電卓の日。電卓でするものといえばもちろん「計算」。生活や実務に役立つ1000種類以上の計算を無料で提供するサイトがあると聞いて、その生みの親を訪ねてみた。すると話は、計算、関数電卓、そしてポケットコンピュータのことへ発展し……。連載「仕事に役立つITニュース」、今回は特別編として、電卓と計算についてのコラムを掲載します。

3月20日は「電卓の日」

1972年発売、1万2800円と破格の安さで大ヒットした電卓「カシオミニ」。「答え一発!カシオミニ」というCMで人気を博した。これ以来、電卓は一人一台持つものになった。

3月20日は「電卓の日」。1974年に当時の「日本事務機器工業会」が制定したものだ。特に語呂合わせはない。1964年にシャープが国産初の電卓を発売した3月18日にちなんでいるそうだ。

日本で電卓メーカーといえばシャープとともに忘れてはならないのがカシオ。互いにライバルとして様々な電卓を市場に投入してきた。

実は国産初の電卓はシャープでも、世界で最初に「純電気式計算機」を開発したのはカシオ計算機なのである。

その電気式計算機の稼働品を今でも見られる場所がある。世田谷区成城の「樫尾俊雄発明記念館」だ。カシオ計算機を創業した樫尾三兄弟のひとりで、発明家であり、14-Aの開発も担当した樫尾俊雄氏の自宅の一部を記念館として公開しているのだ(要予約)。そこで、電卓の日を皮切りに、3月21日から5月10日まで「学びと遊びの電卓・電子辞書展」が開催される。

世界初の小型純電気式計算機「14-A」。1957年、カシオの創業者樫尾俊雄氏が発明した。机全体が計算機で、341個のリレーを使っている。
「14-A」の操作部分。数字の表示に注目(左)。背面には341個のリレーがずらりと並ぶ(右上)。リレーは電磁石でスイッチを動かしてON/OFFする機械。これを並べて電気を流し、計算を行った(右下)。

この特別展に伴い、メディア向けの説明会が開催された。

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カシオの最新関数電卓の一つ「CLASSWIZ fx-JP900」。表計算機能を搭載し、QRコードを使って外部へデータ転送、グラフを表示できる。

そこで興味深い話を聞いた。電卓から派生した教育向けの製品といえば、関数電卓と電子辞書が代表的だが、カシオの電子辞書は日本で圧倒的に売れているのに対し、関数電卓は日本“以外”の国で普及しており、日本での売り上げは「極めて少ない」という。

新入学シーズン、日本では入学祝いとして「電子辞書」が人気だが、ヨーロッパでは売り場に関数電卓がズラリと並ぶのだそうだ。

海外でこれほど売れる関数電卓が、なぜ日本では少ないのか。各国の教育ポリシーの違いではないかという。アメリカでは試験に関数電卓の持ち込みが必須の大学もあるくらいだが、日本では持ち込みを許さないところが多い。

電子辞書は従来の紙の辞書を置き換えたものだからすぐ受け入れられたが、電卓は従来苦労して手計算していた教育をがらりと変えることになるので、変化を嫌う人たちに受け入れられないのではなかろうか。

発表会にゲストとして登場した長野県教育センターの新井仁先生は、「数学教育として重要なのは計算ができることではなく、数学的な考えで何かを解明するという思考プロセスにある、グラフ関数電卓は手作業では処理が難しい計算も行ってくれるので、思考を整理して命令をどう与えたらいいかというプログラミング教育にも役立つはずだ」と語る。


カシオは現在世界100カ国以上で関数電卓を展開し、また、国別にカスタマイズした商品を16エリアで52モデル開発・販売している。販売している全台数のうち、日本向けは1割以下だという。