1000種類以上の計算ができる、カシオの計算サイト
カシオで黎明期の関数電卓を開発した人はどう考えているのだろう。
実はカシオ計算機がひっそりと開いている「高精度計算サイト」というWebサイトがある(http://keisan.casio.jp/)。あらゆる計算を行ってくれる無料のサイトだ。それを立ち上げたのが、関数電卓を開発したその人だったのである。
このサイト、「生活や実務に役立つ計算サイト」と書いてあるだけで、よく探さないとカシオの名前も見つからないほどなのだが、カシオ計算機が提供するれっきとした公式サイトなのだ。特に宣伝もしてないが、月間1000万PVとかなりの規模。
電卓や関数電卓というモノを売る会社が、フリーで計算機能を提供してくれるとはどういうことなのか。これは話を聞かねばなりますまい、とカシオ本社を訪ねてみた。
関数電卓から計算サイトへ
計算サイトを始めたのは、コーポレートコミュニケーション統括部ウェブ戦略部戦略企画グループの伊藤久志氏。いまや世界中で使われているカシオの関数電卓をこれまで数々開発してきた人物だ。
伊藤氏が関数電卓を開発したいとカシオ計算機に入社したのは昭和51年。以来「fx-502p」や「fx-602p」といった初期の関数電卓や、その後登場した「PB-100」や「fx-860p」を代表とするポケットコンピュータまで担当していたエンジニアだ。
実はわたし自身も、学生時代にfx-602pに大変世話になった記憶がある。当時のパソコンは高価な上に、ちょっと複雑な計算になると自分でプログラムを書かなければならなかった。当時のパソコン入門書には、利息計算や三角関数、簡単な科学技術計算などをさせるサンプルプログラムが必ず掲載されており、読者はそれを見ながら手で打ち込んでいた時代だ。
そこでパソコンより低価格で小さく簡単なプログラムを組めるポケットコンピュータを出したのが伊藤氏。でも、ほとんどの人は自分でプログラムを組むことができない。でもそれではあまりにもったいない。複雑な計算は機械に任せて、使う人はもっと知的な作業をして欲しい。そこで伊藤氏は考えた。
あらかじめ組んでおいた各種計算用のライブラリを大量に開発し、それを呼び出すだけでよいようにした製品(fx-860p)を開発したのだ。
「あの頃はライブラリを大量に開発して提供することに熱意を持っていた時代だった」と伊藤氏は語る。これが今の計算サイトにつながるのである。