早稲田大学招聘研究員の渡瀬裕哉氏も、トランプ大統領誕生による好景気を支持する一人だ。「トランプ大統領誕生で米国経済大崩壊、というトンデモない事前予測が間違っていたことが証明された」とこの結果を見ている。

「今後米国はトランプバブルとも呼べる好景気を迎えるでしょう。トランプ次期大統領と上下両院議会の協力関係が経済に与えるプラスの影響は非常に大きい。さらに、共和党は経済成長を重視し、『減税』と『規制緩和』を金科玉条とする、『小さな政府』を標榜する政党です。民主党的な格差是正ではなく、社会全体の富を増やすことで貧困をなくそうとしています。具体的な経済政策としては、所得税の簡素化・引き下げ、法人税の引き下げ、米国本国への資金還流に課す税金の引き下げ、ドット・フランク法の廃止や環境規制撤廃などのビジネス促進政策が掲げられています。さらに、トランプ氏は道路、橋、鉄道、港、空港などの巨額のインフラ投資を有権者に約束しています。共和党自体は、財政規律を重んじる傾向にあり、公共事業による支出拡大を嫌いますが、これも民間資金を利用したインフラ整備策であるPPPを促進することでクリアできます。トランプ氏は、民間資金やノウハウを上手に活用することで、選挙公約を果たしていくでしょう」(渡瀬氏)

さすが米国で大成功したビジネスマン。トランプ氏の経済政策は景気刺激策てんこ盛り、と言えそうだ。しかし、懸念すべき点もある。

「減税、規制緩和、民間資金の活用、オバマケアの見直しなど、小さな政府を積極的に志向する政策は、ビジネスマンの感覚を持ったトランプ氏のリアリスティックな成長戦略と言えます。ただし、TPPに関しては米国にとって経済的なメリットがあまりないということもあり、現状維持(TPP離脱)となったのでしょう。また、中国の為替政策に対して、表面的にはトランプ氏・共和党ともに強い姿勢を示していますが、米中関係が悪化すると考えるのは早計。むしろ、為替操作懸念や輸出補助金の廃止などが問題化するほど、中国はかつての日本のように米国への企業移転を進める可能性があります。その結果として、中国からの対米直接投資が増加し、米中関係が実質的に密接になっていくことも考えられる。さらに、トランプ政権とFRBとの利上げを巡る綱引きも、懸念すべきと言えるでしょう。日本がトランプ政権の経済成長路線の恩恵に与れるかは、安倍政権の外交手腕次第です」(同)

(時事通信フォト=写真)
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