現職官房長官敗北か、揺れる首相の心中
政界が固唾を呑んで見守る次期衆院選はいつになるのか。与党内で10月に吹き荒れた「解散風」は沈静化し、予想されていた年末年始の解散総選挙には否定的な見方が浸透しつつある。しかし、「解散」と「公定歩合」だけは嘘を言っても許されるというのが永田町の「暗黙の了解」で、野党側は早期解散を前提に選挙準備に着手している。もちろん、その答えは安倍晋三首相に委ねられているが、各選挙区事情に目を移せば必ずしも与党にとって好ましい結果とはいえず、早期解散か断念かで首相の葛藤は続いているようだ。
「支持率が高いからといって、怠けていたら(公認候補は)差し替えます」。自民党に衝撃が走ったのは11月29日。二階俊博幹事長は記者会見で次期衆院選の候補者差し替えに言及した。それまで自ら「解散風」を吹かし、安倍首相と会談後は一転して早期解散に否定的な見方を示した二階氏だが、この日は「国会は秋の空と同じようにすぐ変わる」として再び戦闘モードに入った。
各種世論調査で安倍内閣の支持率は約6割と依然高く、政党支持率も自民党が民進党を大きく引き離しており、選挙で事実上の実権を握る二階幹事長が「ゴーサイン」を出しても不思議ではない。党執行部は次期衆院選で自民党の選挙区議席が86減の137議席になるとの試算を示し、当選基盤が弱い若手議員の危機感をあおっている。
今年夏に参院選との衆参同日選挙を検討していた安倍首相が早期解散には前向きとされる点も「解散風」が吹き止まぬ要因と言える。当初、首相は12月15日からの日露首脳会談で北方領土問題を前進させ、国民に信を問うシナリオを描いていたという見方が大勢だ。消費税増税の延期を表明した記者会見にならい、「領土という国家の重要な部分を合意するのだから国民の声を聞かなければならない」などと日露首脳会談の成果をテーマに衆院選を戦うプランを描いているとされてきた。前回衆院選から約2年を迎え、「小刻みに解散権を行使することにより、権力を維持する」(首相周辺)という戦略に従えば、年末年始の解散が当てはまる。